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アニメ「ひぐらしのなく頃に卒」【”祟明し編”感想】沙都子の名演技がひたすら炸裂する「だけ」の物語

「祟明し編」は当然「祟騙し編」の裏側を描く話である。それでいて、「祟殺し編」と「皆殺し編」の要素を含んだ話でもある。

基本的には「祟殺し」の方よりも「皆殺し」の沙都子を鉄平から救い出す物語がベースになっている。だが、中身が全然異なる。この世界での鉄平はすでにSSR(きれいな)鉄平になっているので、圭一たちが沙都子を救い出す必要が最初から全くない。それなのに「皆殺し」と全く同じように圭一たちが一致団結して児童相談所やお魎たちに働きかけていくという、視聴者側から見たらかつてないぐらいの”茶番劇”が行われていく。

裏側では沙都子が表面的には「皆殺し」の世界になぞらえるべく名演技を次々と披露して見せて皆を翻弄させていく。鉄平をはじめとして梨花や圭一たち、児童相談所の人間など多くの人を演技によって騙していくのだ。そして沙都子を救うべく土下座をしてまで助けを求めてきた鉄平を、それでも疑いながら北条家をたずねた大石は、聞いていたこととは全く異なる現実に安心したのか、つい家の中で寝てしまい、沙都子に注射を打たれてしまうという悲劇が訪れる。

沙都子を救おうとする人たちみんなを騙してまで、梨花を屈服させるためだけに動く魔女沙都子には本当に嫌気がさしてきた。それでも、鉄平とのおだやかな時を過ごす沙都子だけは本当の沙都子だと思いながら見ていると、「祟明し」の中で唯一の癒しの時間になっていた。

さて、今回の疑問点だ。注射に関しては、大石が寝てるうちに打ったということで一応は納得できる(レナの時と同様)。しかも北条の自宅でのことだから注射器の始末もどうとでもできる。(だからレナ、魅音の場合での始末には余計疑問を感じる)

問題は鉄平をやったあとだ。血であふれた室内をどう処理するのか。そして、体に付いた血は洗い流したとしてもニオイがそうそう消えるものだろうか。迎えに来た梨花も血の匂いを、家の外からとはいえ全く感じなかったのだろうか。さらに祭りの最中、家の中に誘い込んだ圭一だ。室内が暗くなったとはいえ、血にまみれているであろう室内(血を拭き取る時間さえなかったはずだ)に気付かないはずがない。においもきっと残っていただろう。

さらに「祟騙し」では圭一が鉄平に襲われるシーンがあった。だが、圭一が北条家に来たときにはすでに鉄平は亡くなっている。ということは、実際にあったことではないことはわかる。それが圭一の妄想だったのか、それとも大石のそれだったのか。はっきりとした「明し」描写もないままにして話を進めてしまっている。発症している大石が魔女沙都子のいうことをいちいちちゃんと耳を貸して、さらにすべてにおいて真に受けてるのにもどうにも違和感がある。”裏側”というにはあまりにもお粗末なのだ。

一方で、大石も今までは決して発症することのなかった人物だ。”大石がもし発症したら”というIFの世界を見せた、という意味では意義があったかもしれない。魅音にしても同様だ。もちろん、きれいになった鉄平をさらに見ることができたという意味においてもだ。ただ、つまるところそれだけなのだ。

「祟明し」全体で見ても、まず圭一たちが児童相談所に立ち向かうくだりはもっともっと端折っていいのではないかと思えて仕方ない。基本的には「祟騙し」そのままでしかないからだ。当時のニコ生のコメントで「再放送」と言われていたのも納得しかない。「綿流し」からの「目明し」のように、同じ部分は極力なくして、その分もっと裏側をしっかり見せてほしかった・・。

そして、今回は最後にレナが沙都子による梨花の惨殺場面を目撃している。これがあとに重要な意味を持つのではと放送当時は思っていたが、のちにも全くもって関係がなかった。ただ、その世界でレナが目撃しただけ・・。ここまでレナや圭一たちが全くと言っていいほど活躍をしてこなかったので、レナが別の世界でこのことをフラッシュバックして、ついに梨花と協力し、そして圭一や魅音、詩音も…などという熱い想像をしてしまったじぶんを返してくれと声を大にして言いたい。それほど不満が残る「祟明し編」だった・・・。もはや期待したくても、望みはほとんど持てなくなっていた。

それでも、次は「神楽し編」という「明し」ではない編だと知り、一片の期待を抱かずにはいられなかった・・・・。


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