煙草の吸い方

煙草と聞くと健康への被害や副流煙問題など、ネガティブなイメージが連想されがちな現代ではあるが、一方で煙草がコンビニのレジ裏の棚にビッシリ並んでいるのも現実である。
イメージの悪さとは裏腹にまだまたま需要があるとわからされる。
――しかし健康的に被・・・

「筆者」がそう謳い始めて、読んでいた記事を閉じる。
所詮、非喫煙者がカネの為に書いた「いい子の作文」に過ぎない。
そんなものを眺める事より、今は指先で燻って、ライトに照らされ、滑らかな「うねり」を世界に描くコッチの事に目を向けたほうがいい。
君も大人になりたいか?

そろそろ、煙草の吸い方をお教えしよう。


201×年 某日 東京都八王子市、コンビニの駐車場にて。

「オマエ、タバコなんか吸ってたのか?」
二組のカップルのダブルデートに遭遇。
「私タバコ吸う人嫌ーい。」「私も~。」
なんでタバコなんか吸ってんのさ。と言わんばかりの彼氏陣。
憂鬱の最中、搾り出る言葉もむなしいのだ。
雑多に空いた口の隙間に一本ねじ込んで火をつける。
「早死にするらしいよ~」
口をとがらせて言われる、頭にくる。
「俺はすこしでも早く——いや、なんでもねぇよ。お幸せにな。」

2022年 5月×日どこかの部屋にて。


「私の亡くなったお父さんはセブンスター、吸ってたよ。」
言葉によって告げられ、仕事中脳裏に焼き付いてしまっていたその一言が
「すみません、セブンスター一つお願いします。あっ、ハイ。普通ので。」
コンビニの会計前に思い出され、ポケットに白い箱が一つ増える。
夜の街を横目に、革靴の音と黒いスニーカー。
赤いドレスが床に散らばって濡れたシーツと慣れた睦言。

「あなた、セブンスターだったっけ?」
「いや、少しでも、懐かしい気持ちに、なれたらなって。」

2023年 某日 東京都〇〇市、ライブバーにて。


「卵とか肉の燻製とかって煙で燻されて、美味しくなるでしょ?」
「人間も同じでさぁ…なんかこの煙に燻されて、もっとこう良くなるんじゃないかなぁって。」
真剣なのか、営業トークなのか、はたまたそのどっちもなのか。
いつものテンションでマスターは謳う。
一番端に座り、首を傾げる若人に向けて。
それを聞くなり
「一理ある、と思う俺はもうこっち側の人間なんだな。」
脳内で僕が言う、体も連動し肩を落とす。
つかさず胸のポケットに入っていた赤いマルボロをそっと開けて口に咥える。
100円ライターの弾ける音、
灰色の吐息さえ美しい、暗闇に溶けてゆく、氷の解ける音、
知らないレコード。
マスターと目が合うんだ。
「裕君もタバコ吸うもんね~。」
「まーね。」

暫く情景描写を省く、雑多な日々と副流煙とともに交わした言葉を羅列する。


「音楽を、したいのか?お前は」
———雑居ビルの中にあるバーのマスター。

「君はまだ吸っちゃだめだぞ~」
———ライブバーのママ。

「いいからいいから、客なんてこねぇよ。いけるいける。」
———勤務中のバイトの先輩。

「トモダチ、難しいよなぁ。俺もうわかんなくなっちまった。」
———白いマークⅡの走り屋

「もう黒いことはしたくないんだよ。俺は。おれはさぁ」
———元構成員の壮年

「こんなマズいもの吸えるか!クソ…」
———墓参り、祖父に煙草を備える父

「…一箱持って帰ってください。夫にバレてはいけないので。」
「さようなら。どこかで、またあえたらいいですね。」
———黒いドレスのピアニスト

「オイラのイベントを守ってくれてありがとう。」
———某チャンピョンボーイズのボーカリスト

「私、ママに怒られちゃうよね。ごめんね。ごめんね。」
———通話越しの学生

「くら大先生は~お吸いになられないんですかぁ~。」
———髪を結わいたアーティスト


2023年 7月16日 

「ここって喫煙いけるかな。」
「イケるっしょ。」

これが煙草の吸い方さ、え?火をつけた後すぐに消えてしまう?

吸い方がわりぃんだろ、吸い方くらいググれ。じゃあな。


ぷはー 金ピうめーーーーーー

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