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空中散歩 ②

私がやりたかったこと…?

「君は昔、三日月に腰掛けてみたいなって思ったことがあったでしょ?だから今からそれを叶えてあげる」
君は自信満々だ。そう言われて進行方向をよく見ると、確かに私達は上空に浮かぶ三日月めがけて進んでいるようだ。

確かにそういうイラストとか映像は好きだ。綺麗で、儚げで、ロマンチックで夢があって、想像が膨らんでいくよね…。
でも、ちょっと待って。
「ねぇ、君!月っていうのはさ、地球の周りを回ってる衛星で、デカすぎて…。いや、というか三日月って太陽の光が当たってそう見えてるだけで、…つまり本当は球体なんだよ!腰掛けられないでしょ」

君は振り向いた。微笑んでいる。
「知ってるよ。だから、僕がそれを球体じゃなくして、2人で腰掛けられる程度の大きさにしてあげるよ」
そう言う君の瞳には、迷いがない。自信しかない。
そうだな。今、夜空を走ってるっていう時点で、もう不可能なことなんて何も無いのかもしれない。

「ねぇ、そういえば君、名前はなんていうの?」
君は不思議そうな顔をして振り返った。私の顔をまじまじと見つめる。
「僕の名前?
…さぁ、なんていうの?」
質問に質問で返された。

「…まだ、浮かんでこないみたいだね。まぁ、いいんじゃない?僕の名前は『君』ってことで」

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