出版事業の立ち上げに誘われた人

出版業界での経験が全くないどころか本を読む習慣すらなかったのに、出版事業の立ち上げに誘…

出版事業の立ち上げに誘われた人

出版業界での経験が全くないどころか本を読む習慣すらなかったのに、出版事業の立ち上げに誘われた人。

マガジン

  • 倉貫書房立ち上げ実務裏話

    • 14本

    納品のない受託開発をしている会社が、「ISBNって何!?」というレベルから出版社を立ち上げるまで。 これから出版社を立ち上げることを検討されている方の参考になれば嬉しいです。

最近の記事

【レポート】吉祥寺・ブックマンションでゲスト書店員をさせてもらった話

4月28日(日)、吉祥寺・ブックマンションの棚主である「ぺろきち商店」様に、倉貫書房特設ブースを作っていただき、倉貫さんと私をゲスト書店員として呼んでいただきました。 ブックマンションは、2019年7月にオープンしたシェア型の本屋さんです。 本棚を貸出し、借りられた方が定期的にお店番をする形で運営が成り立っています。 棚主の「ぺろきち商店」さんは、2021年度グッドデザイン賞を受賞した『吉祥寺かるた』をはじめとするゲームや雑貨を販売する、『「あそび」と「デザイン」でコミ

    • 第12話:梱包・発送する

      直取引だと、個人・法人問わず、お買い上げいただいたお客様への発送は自分たちでする。私たちの場合、著者を含め、全員で梱包・発送している。 「第11話:流通に乗せるための機関に登録する」と同時期に、師匠などに発送業務について習い、梱包材の選定と運送業者への相談をしていた。 1冊で発送する場合、水濡れ防止にCPP袋に入れ、「キャッスル封筒」で送ることをお勧めされることが多かった。発送方法は、クリックポストかゆうメール。 キャッスル封筒だと、ロゴも「ゆうメール」の印字も入れられる

      • 第11話:流通に乗せるための機関に登録する

        発売は2024年3月9日だったのだが、「第9話:印刷するまでに必要なこと」の一連の作業と並行し、流通に乗せる準備をしていた。 「広く書店への営業をするのではなく、私たちの活動に興味を持っていただけるような奇特なお店に限定し、初版の1,000部までは取次を使わず、基本的にはBASEでの販売にすることにした。Amazonでの販売もしない。」という方針にしたので、本来、以下に記載するような機関に登録する必要はない。 では、なぜ、登録したのか。 私たちは、紙の本が持つ力はなにもの

        • 第10話:なぜ出版事業をするのか改めて考えてみた

          私の特性なのかもしれないが、社会人になって以来、同じ事業であっても、コンセプトの違う活動に同時に関わることは珍しくない。 立ち上げ期においては、業界への理解を深めることが必要だが、既存の手法をいくつか見た方が固定観念に捉われなくて済むし、やってもみないで方針を固めてしまうより、それぞれの考え方の良いところを取り入れた方が独自のものができることが少なくないからだ。 そのため、次から次へと興味の範囲が広がり、いろんな方々に教えていただいているうちに、出版事業に全力を注ぐというより

        【レポート】吉祥寺・ブックマンションでゲスト書店員をさせてもらった話

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        • 倉貫書房立ち上げ実務裏話
          14本

        記事

          第9話:印刷するまでに必要なこと

          原稿は、すでに師匠に手を入れてもらっていたのだが、印刷・製本するまでには、DTP、校正、装丁、印刷といった工程がある。 まず思ったのは、「DTPって何?」。 私は、ざくっと、「印刷会社に印刷してもらうために必要なデータを作ること」と認識している。我々は専門会社にお願いしたのだが、出版業界経験者の方が出版社をされる場合は、ご自身がInDesignで作成されることもあるようだ。 まず、装丁家さんに、原稿サンプルとともに、概要、サイズ・製本方法・ページ数をお伝えし、本文フ

          第9話:印刷するまでに必要なこと

          第8話:初版部数・価格を決める

          この本は、初版印刷部数を増刷前提の1,000部、本体1,200円(税別)にしたのだが、決定までの経緯を書いていきたい。 まず、出版業界の方は、部数について、「あれ?」と思われたかもしれない。1部あたりの印刷費用は部数が多いほど下がることもあり、ほとんどの方から、「2,000部」が一般的だと聞いていた。実際に収支計算をしてみて、たしかに2,000部が損益分岐点であるとわかった時は、「うぉっ」と声が出た。 倉貫さんの既刊の販売数や、「初めての出版事業だから一般的な出版社の

          第8話:初版部数・価格を決める

          第7話:印刷・製本について学ぶ

          売り方の方針が決まったので、ついに印刷・製本の準備を始めることになった。 本来は、装丁が固まってからでいいのだと思うが、右も左もわからないため、まずは、師匠のセッティングのもと、大人の社会見学的に勉強させていただいた。 まずは、印刷会社。 最初に教えてもらったのが、本って、四六判やA5判などの形、上製や並製などの製本の仕方、とたくさんの種類があること。 言われてみれば、単行本、新書、文庫、ハードカバー、ソフトカバーといろいろあるな、と思っていると、紙は桁違いに種類があ

          第7話:印刷・製本について学ぶ

          第6話:どうやって読者に届けるか

          冒頭に書いたとおり、私は、倉貫さんのように著者になったことも、出版事業に関わったことも一切ない。 さらに、本も読まなかったので、Amazonや書店で必要な本を買う以外の購買ルートを知らなかった。Amazonは知人から紹介されたリンクをクリックするだけ、本屋の滞在時間も最低限で、人はどうやって本を知り、どのように購買意欲が発生するかも全くわからなかった。 どうしたものか、と思っていた時、お世話になっている方々が御代田町で立ち上げた「暮らしの中で本を楽しむ」を実践するプロジェク

          第6話:どうやって読者に届けるか

          第5話:どんな出版事業をしたいか具体的に考えてみる

          既存の一般的なやり方を踏襲するのであれば、第一ステージから、業界のレジェンド級の師匠たちに出会えたこともあり、容易く立ち上げられるように思えた。 この時点では、既に固まっている方針に基づき、とにかく事業を進めるという役割で呼ばれたと誤認していたので、実際に、私がこのプロジェクトに参加してから半年程度で、一冊目を発売するスケジュールも組んだ。 しかし、どこに行っても、「どうしたいか」が問われ、選択肢が多いことがわかると、本当にそれでいいのだろうか、という疑問が生まれた。 倉

          第5話:どんな出版事業をしたいか具体的に考えてみる

          第4話:ISBNを取ってみる

          師匠も工藤さんも、「少し時間がかかるから、とりあえずISBNの取得を急いだほうがいい」と言っていたので、取ってみることにした。HPには、「合計2週間(営業日)程度かかる場合がある」と記載されており目安にしていたのだが、下記のとおり、手こずったところがあり、完了までに1ヶ月ほどかかった。 まずISBNとは何か。 ISBNは、書籍出版物の書誌を特定することができる13桁のコードで、出版取次会社や書店(ネット書店も含む)を通して本を販売しようとする場合、ほとんどの方が付けること

          第3話:トランスビューとの出会い

          倉貫さんから出版事業の話をされた際に、すでに「トランスビュー方式」というワードは出ていたが、いかんせん、まったくの無知だったので、何のことなのか見当も付かなかった。その時、「業界では良く知られている手法だから、ネットで検索してみてください」と言われたので検索したら、なるほど、いっぱい出てきた。 いっぱい出てきたのだが、そもそも従来の方法を知らず、取次という制度があることすら知らなかったので、「トランスビューっていう会社がつくった独自のやり方なんだな、へぇー。」と思ったくらい

          第3話:トランスビューとの出会い

          第2話:師匠との出会い

          自分の知っているものに置き換えて考える準備は整ったのだが、いかんせん出版業界を知らな過ぎて、全体像が全く見えなかった。 ドラクエで言うなら、全体のマップと、ラスボスの手掛かりが早く欲しい。何のために戦えばいいかはなんとなくわかったが、何を倒せばいいのだろう。とにかく、ヒントをくれる村人に出会いたい。 そういったことを伝えようとすると、「もういるんですよ」と倉貫さんから紹介されたのは、村人どころか、パーティに入れなければ次のステージに進めないレベルの重要キャラクターであった

          第1話:インディーズ出版とは!?

          事の発端は、倉貫さんと仲山さんのポッドキャスト「ザッソウラジオ」に呼ばれたことだった。 仲山さんを通して、お互い存在は知っていたものの、ほぼ初対面で、収録中に倉貫さんから「相談したくなりますね」といったコメントがあったのだが、完全に社交辞令だと思っていた。 ところが、収録後早々に連絡があり、「何か一緒にやりましょう」とお話をいただいた。「何か」のイメージが全く付かず、リアルで会ったこともなかったのに、なぜか即承諾してしまったことから、この話は始まる。 1ヶ月ほど経ったある

          第1話:インディーズ出版とは!?

          はじめに

          これは、お客さまのパートナーとなり事業開発や業務改善をソフトウェアで支援する「納品のない受託開発」を主業として営む株式会社ソニックガーデンが、出版社を立ち上げ、書籍を発売するまでの軌跡である。 社員は50人ほどいるが、ほとんどがエンジニアで、テックブログなどインターネット上で文章を書いたり、技術系同人誌を作っている人はいても、出版社の経験がある人は、まずいない。 いやいや、代表の倉貫さんは何冊も本を出しているし、社員も技術書を出しているではないか、と思った人もいるだろう。