きょうのあたしはリラックスよ。
　昨日は一日たいへんだったんだからね。
　聞きたい、教えてあげるからね。
「クララ、余計なことをいうんじゃないわよ」
　あら、わかっちゃった。
「わかるわよ。いたずらしようかな、どうしようかな。、って、ゴロゴロしていたんでしょ」
　だって、きのうは誰も相手をしてくれなかったんだもの。
「だって、忙しかったんだもの」
　そうだよね、びっくりしたものね。

　あたしの飼い主はおばあちゃんの姉妹なのね。
　あねばあちゃんは、年寄りなのに童話作家になりたいんだって、あたしはヒロイン候補ナンバーワンなんだって。
　いもうとばあちゃんはあたしのお友だち。
　あたしがいないと「クララ、クララ」って、家の中を捜しまわるんだから。
　あたしは、ちょっと意地悪して、カーテンの下とか押し入れの中に隠れたりすると泣きそうな顔で探し回るんだよ。
　家の仲しか行くところないのにさ。
　おとななのにおかしいでしょ。
　あねばあちゃんにいったらさ、いもうとばあちゃんは、病気になるまでは保育園の先生だったんだけど、高い熱が続いて、寝たきりになって、熱が下がったら歩けなくなったんだって。
　歩けなくなったいもうとばあちゃんは、小さな子どものようになって、おねえちゃんのことをおかあさんだと思うようになっちゃったんだって。
　だからあたしのことも猫だけど、お友だちだと思っているのよ。

　あねばあちゃんの書く童話の主人公の座をあたしから奪おうとしているのかも。
　譲らないわよ。

　おしゃべりが過ぎちゃったかな。
　昨日は、いもうとばあちゃんが熱を出したから、朝早く訪問看護師さんが来たり、リハビリをキャンセルしたり、ケアマネさんに連絡したり、あねばあちゃんは大変だったのよ。
　ねえ、おねえちゃん
「あんた、いま、あたしたちの事、おばあちゃん、っていったでしょ」
　あら、わかっちゃった。
「目つきをみればわかるわよ」

「あのね、クララ、昨日の騒ぎは、あたし昨日書いたよ」
　なんだ書いたのか、つまらない。
　書いちゃったんだって。
　あたしがおはなししたほうが面白いのに、がっかりだわ。
　みんなだって、そう思うでしょ。

　またね。