私の母はおもしろいひとだった。
　(￣∇￣;)ハッハッハとみんなが笑うようなことばかりしていた。

　私が一番呆れてしまったのは、むかし、私が歯科医院で働いていたときに、妹が前歯を金歯から白い作り換えてもらった。そのあとで治療に来た母が「全部白い歯にしてください」と金歯ばかりの口の中を見せて行った。
　しかも「代金は佐代子が払います」といったそうだ。

　院長が「井口さん、ちょっと、おかあさんが全部白い歯にしてくださいって、言ってるけど、代金はあなたが払うっておっしゃってるけど」
「そうですか、じゃあ、そうでしょう。言い出したら聞きませんから」
「そうなの、全部治すと結構な金額になりますよ」
「はい、すみません。お給料から分割でお願いします」といった。

　帰宅して母に問いただした。
「何で、あたしが払うのよ。おとうさんに払ってもらえばいいでしょ」といったら「やだ、金歯にしたばっかりなのに、白くする、なんて言ったら、怒られるもん」だって。
　わが家は田舎で、むかしは金歯が主流だった。
　だが、妹の白い歯を見たら、やっぱり白い歯のほうが都会っぽいと思ったそうだ。
　妹は自分でバイトして支払ったのに、よくもいってくれたものだ。