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石原路子さんの哀しみのテディベアによる逆縁の画家・熊谷守一の死生観の再現

熊谷守一(くまがい・もりかず)は、明治13年(1880年)から昭和52年(1977年)まで生き、97歳で亡くなった大変長寿の画家です。

守一の長い人生には、人並み外れた貧乏生活の中で、子供5人のうち、3人を亡くす悲哀がありました。1928年(昭和3年)には2歳の次男・陽を亡くし、1932年(昭和7年)には、生まれて間もない三女・茜が病死します。1947年(昭和22年)には、長女の萬が戦中の学徒動員の中で倒れ、寝たきりとなったまま21歳で亡くなりました。1)

長女・萬の死から9年後の1956年(昭和31年)、76歳の守一は、第2回現代日本美術展に「ヤキバノカエリ」を出品しました。

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熊谷守一・作「ヤキバノカエリ」1956年(岐阜県美術館・蔵)2)

作品では、ゆるやかに下る広い道を、白い骨壺の包み抱いた長男・黄をはさんで、右に守一、左に次女の榧(かや)が並んで歩いています。

長男の黄は、前を向き骨壺を抱えています。後に画家となる次女の榧は、僅かに後ろから兄の横顔を見ています。守一は、二人からやや距離を空けて前を歩いています。

今回は、3人の微妙な距離感を、テデイベア作家・石原路子さんによる3体のテディベアで再現してみました。

IMG_2721のコピー

位置関係が異なる3体のテディベアに、それぞれ異なった身体感覚を覚えるのは、じわじわと意味が立ち上がってくる石原作品ならではの、奥深い味わいです。


文献

1)福井淳子・著:いのちへのまなざし 熊谷守一評伝. 求龍堂, 2018. P246-248

2)熊谷守一:熊谷守一画文集 ひとりたのしむ. 求龍堂, 2008, P14

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