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「天国に一番近い里」から学ぶ「続ける」ということの意義。

今年も行ってきました、「天国に一番近い里」。

何のこと?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。「天国に一番近い里」とは、島根県邑南町口羽の川角(かいずみ)集落でこの季節に楽しめる、ハナモモと菜の花が咲き乱れるスポットのこと。

白・ピンク・赤のハナモモ2000本に、黄色い菜の花…まるで桃源郷のような風景が広がるため、「天国に一番近い里」と名付けられているのです。

くらしアトリエスタッフは、季節の花々を追いかけて山陰をあちこち動き回っているのですが、特にこのハナモモの風景はできる限り毎年出かけるようにしています。

2022年の春はこの記事で。

2018年にはこちらの記事で紹介しています。

この風景は、地元の皆さんによって作られたもの。
2007年くらいから、耕作放棄地にハナモモの樹を植え続けておられます。

植樹は少しずつ続けられ、いまやハナモモの木は2000本以上に。町の観光スポットになり、県外からも多くの方が訪れる場所になりました。

私たちが出かけたときも、鳥取や広島などからたくさんの方がカメラやスマートフォンを片手に訪れていらっしゃいました。皆さんすごく楽しそうに記念撮影をしたりしておられて…毎年訪れているからか、何だか自分のことのように嬉しくなってしまい、「みんな嬉しそうで良かった」という謎の気持ちが沸いてきました。

うどんやラーメンなどが頂けるスペースはハナモモがきれいに見える高台に設置されていて、皆さんお花を見ながら食事を楽しんでいらっしゃいました。「きれいだねえ」「いい時に来れて良かった」という声があちこちから聴こえて、やっぱり謎に自分のことのように嬉しくなったのでした。

景色をずーっと見ておられた女性が、ふうと息をついてから「私、ここに住みたい」と切実な顔でおっしゃっていたのも印象的でした。確かに、こんな夢のような風景を見ながら日々を過ごせるなんて幸せなことだと思います。

でも、当たり前ですが最初からこんな風景だったわけではありませんし、毎年多くの人が訪れる場所だったわけでもありません。

もともとは「過疎化した集落ににぎわいを」という思いから、耕作放棄地にハナモモを植えたのが始まり。2000本という数を植えるまで、少しずつ少しずつ努力を積み重ねてこられたのだと思います。最初の1本を植えたときに、今の状況を本気でイメージされていた方が、果たして何人いらっしゃったしょう。

実は私自身も、かなり昔のことになりますがとあるシンポジウムでこの川角集落の地域づくりメンバーの方と一緒に登壇させていただく機会があったのですが、当時はこんな美しい風景に成長するとは思っていませんでした。

「おもしろい取り組みをされるなあ」とは思ったのですが、花というものにどれだけの求心力があり、どれだけの方が足を運ぶのか、全く想像できなかったのです。まして、自分自身が毎年、2時間以上かけて通うことになるなんて考えもしませんでした。

でも、やっぱり続けていけば、積み重なったものはその重みも相まって、見ごたえのあるものになるんですね。一朝一夕では成し得ないからこそ、見る人たちにすごい力を与えてくれるように思います。元気、たくさんいただきました!

ところで、きれいな場所に行くと決めると「かわいいランチしようか」という話になる私たち。今回も朝からいろいろ準備をして出かけました!

地元の方にうかがったところ、「スペースのaあるところで邪魔にならなければ食べていいよ」とご許可を頂いたので、ハナモモが見える場所にレジャーシートを敷いて。

風景とかわいいランチを撮影してYouTubeにUPしたので、動画もぜひご覧ください。

地元食材と美しい風景で生まれる、おいしいお昼ごはん。それが「かわいいランチ」です。

この日はピクニックランチということで、サンドイッチ。前の日に松江市の「四方」さんでおいしいバゲットとベーグルを買っていたので、中に挟む具材をあれこれ用意して、花を愛でながら好きに挟んでいきました。

にんじんラぺサラダやツナマヨ、焼きトマトに菜の花など、彩りを考えて挟んでいきます。2日前に江津市の道の駅「サンピコごうつ」でゲットしたいちごでいちごジャムも作ったので、クリームチーズと合わせたベーグルサンドをデザート代わりに。

淹れたてのコーヒーもおいしく、目にもお腹にもごちそう、のひと時でした!やっぱり「かわいいランチ」は素晴らしい風景あってのものだなあ。

こういう花や風景を楽しむスポットで、いつも心温まるのが地元の方のおもてなしです。駐車場をきれいに管理されていたり、休憩所を作ってくださったりと、「この場所を楽しんでほしい」という思いが伝わってきます。訪れる方が「また来よう」と思ってくれるように、心を尽くされているのがちゃんと届いている気がします。
私たちが出かけた時には地域の方が「花桃カレー」を販売されていたのですが、テーブルの隣の椅子の上にひっそりとクレソンの束がたくさん置いてありました。

聞くと、地元の方が朝、採ってきてくださったものだそう。1束100円で、募金の代わりになるとのことで、料金はそのままこの地域の活動のために活かされるのだそうです。その日のうちにおひたしにしていただきましたが、とてもおいしかったです。
ただクレソンを買った、のではなく、そういうストーリーが背景にあることを知ったうえで料理をすると、よりおいしく感じる気がするから、不思議ですね。

現在の川角集落の住民は13人とのことで、地域での生活を維持していくのもきっと大変だと思いますし、木や草花の管理などもきっとご苦労が多いと思います。でもきっと1年に1度のこの時期の、訪れる皆さんの笑顔が励みになっているのだと思います。

ささやかな試みが、5年、10年と続いていくことで、少しずつ広がっていき、大きな流れになり…やがて、町を代表する場所になる。

自分たちが暮らす土地への誇りを持って歩み続けていれば、きっと誰かが見ていてくれる。

そんな、勇気をもらえる場所、川角集落。来年も再来年も、この美しい風景が守られ、多くの方で賑わうようにと、願わずにはいられません。

そして私たち自身も、ずっとこの地域を見守ることができるよう、「続ける」ことに真摯に取り組んでいこうと思います。


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