VR討論会

呉「お前はVRやったことあるんかいな」

金平「あるある。新宿の体験ベースでやったことある」

呉「それはどんなもんや」

金平「ゴーグルつけてな、ビルの屋上で向こうのビルに鉄骨一本渡してるねん。そこを渡るんやけど、脳は完全に騙されるな。怖くて歩かれへん」

呉「そうか。上を向いても下を向いても視点は同期するんか?」

金平「するする。完全にビルの最上階や。そういうスリル系のものだけと違うで。エロもあるで」

呉「何?! なら導入する価値はあるなぁ」

金平「パソコン買い換えるくらいの初期投資いるけどな」

呉「それはあれか? 可愛い女の子がフローリングに四つん這いになって、床にひじついて手にアゴ乗せて『こらー、エイジー。今何時だと思ってるー。遅刻しちゃうぞー』みたいなオープニングの挨拶を真正面から聞かず、相手がまだ喋ってるのに会話すっ飛ばして、後ろに回り込んで肛門を見る、みたいなことは技術的に可能なんか?」

金平「お前は何を考えとるんや!」

呉「なら、教室でショートカット赤いルージュの知的眼鏡女性教師が『エイジくん、8引く4割る2はいくつかなー。先生教えたぞー。一つずつ片付けていこ』みたいな、先生がまだ喋ってるのに教壇の後ろに回り込んで、こういう先生は大抵ノーパンで登校してくるから、黒いレディーススーツの後ろからしゃがんで下から肛門を見上げる、みたいなことは現代の技術で可能なんか?」

金平「お前、なんか肛門にすごいことがあるみたいやな。一回クリニックで診断してもらえ」

呉「診断はええんじゃ! 可能かどうかワシは聞いとるんや!」

金平「それは無理やろう。エロでも部屋の真ん中、ベッドで絡みのシーンを正面から見る。上、下、後ろを見れば、ゴーグルの中で景色は反映するけど、近づいて後ろに回り込んで肛門を見るって、あっ、俺も肛門って言うてしもうた! それは実写では無理やわ。ポリゴンなら可能かもしれんけど」

呉「そんだけ出費して、ワシの思い描くVRには程遠い出来やないかい! まだ時期尚早じゃ、そんな機械」

金平「なんでワシが怒られるみたいになっとるんじゃ! 久しぶりに会うてこれかい!」

 一年ぶりの岡山ドライブ。この後八分ほど車内では無言が続いた。


〜完〜

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