【ヘブバン】ハロウィンとメイクのお話【二次創作】

そう言えばまだ公式でハロウィンイベないなと思う紅月シオンです
今回はハロウィンをテーマに二次創作の小説を書きたいと思います

この話の中心になるのは主人公にして31Aの部隊長の芽森月歌と2章ヒロインにして31Bの部隊長の蒼井えりかになります
時系列とかそもそもこの時期はとか色々の細かい事は気にすんな
それではどうぞお楽しみください

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肌寒い風が広場の木々の間を吹き抜けていく。
季節はもうすっかり夏を超えて落ち葉の色付く秋へと変わりつつあった。
そんな日々の中で足音が一つ、冷たい落ち葉を踏みしめながら広場の奥に向かう姿があった。
(さて、今日は何を弾こうかな)
ミルクティー色の髪を夕日に照らし、青い制服を纏いながら彼女、芽森月歌|《かやもりるか》はこっそりと立ててあった小さな小屋に足を踏み入れる。
ここは月歌がメンバーを務めるバンド、She is Legendの練習小屋、もしくはライブハウスだ。
月歌は時折ここに足を運んでは発声練習をしたりギターを鳴らしたりと気ままに過ごしていた。
今日も今日とて気が向くまま新しい曲でも考えようとここに来ていたのだが、扉に手をかけた瞬間にその奥からギターの音が微かに聞こえてきた。
(あれ?もう誰か来てるのかな?)
ゆっくり扉を引くとそこでやはりギターを弾く少女の姿が見受けられる。
そこにいたのはいつもの焦げたブレザーと赤いスカートの少女ではなく、包帯を各所に巻き、慣れないながらもピックを扱いながらギターを演奏している少女、蒼井えりかが先にいたのだった。

「あ、芽森さん。お疲れ様です」
扉が開いたことに気がついた蒼井は月歌の方を見るがそこで月歌は思わず声を上げる。
「わーーーーー!!蒼井大丈夫!?怪我とかしてない!?」
「え?はい、どこも怪我とかはないですけど」
「どうしたのその包帯!ここに来るまで転んだとか?」
「いえ、あの、これは柊木さんにやってもらったメイクです」
蒼井と同じ31B部隊で、SFな世界観に一人だけ霊能ファンタジーをやっている柊木なら確かにそれっぽいメイクは出来るだろうが、それにしても月歌は何故蒼井がこの格好をしているのかが不明だった。
「え?メイク?」
「芽森さん、もう少ししたらハロウィンライブだからそれっぽいのを考えて欲しいって言ってたじゃないですか」
「あ、そうだ。確かそんな事言った気がする」
「なんでやねーん!」
ここでようやく思い至ったのか月歌は手を叩くが蒼井はその様子に思わずツッコミを入れる。
「お、いいじゃん、使いこなせてるね蒼井」
軽く笑いながら月歌もまた自分のギターに手を伸ばした。

二人の交流ももうだいぶ長くなり徐々に蒼井も月歌の扱いには慣れてきたころだった。
かつては自分を変えたいがゆえに月歌に様々な事を教えてもらい、月歌もまた素直で健気な蒼井を徐々に染めていった。
ギャル語を教えたり月歌が男性役になってデートをしたりと様々な事を一緒に楽しみ、そうやって互いを知っていったのだ。
「そう言えば芽森さんはもうライブ用の仮想は決めたんですか?」
「うーん中々思い浮かばなくてさー」
月歌も考えてこそいるがこれというものが決まっているわけでもない。
当日に間に合う簡単な物でいいのだがそれも中々思い浮かばないでいた。
「それならさ、蒼井が何かメイクしてみてよ」
「えぇ!?私がですか?」
突然の事に蒼井は驚くが月歌はそのまま続ける。
「あたしがしてほしいの。蒼井が考える仮想をやってみてよ」
「あの、蒼井なんかがやってもいいのでしょうか?」
「なんかって言わない、大丈夫だから」
少しずつ月歌色に染まってきたとはいえまだどこか自分を卑下することを知っているからこそ、そして一緒に楽しみたいがために月歌は蒼井の華奢な肩を持つのだった。
「それにさ、あたしが蒼井にやってほしいんだ。どんなものでも構わないから蒼井の思うままやってみてよ」
「芽森さん……分かりました、準備してきます」
そう言うと蒼井は扉を開けて何処かへと向かっていくのだった。

蒼井が足を延ばしたのは学舎にある購買部だった。
広場から走って10分はかかる道だが10秒ほどで往復できる蒼井にとってはそこまで苦でもない道のりだ。
これも日々鍛えているからこそだろう、彼女を見守る31Bの殺し屋姉妹曰く「10秒とは言ったけどホントに買ってくるとは思わなかったニャ」
「くそ、休息にすらならなかったじゃねぇか」とのことでまた何かしらを考えているのだろう。
そんな事はさておき、購買部の前では一人の少女がカウンターに立っていた。
「あ、いらっしゃいませ♪何か注文はございますか?」
店員、佐月マリは蒼井の姿を見かけるとすぐさま店員として接客に応じるのだった。
「えっと、仮装用のメイク道具を探してるんです」
「なるほど、でしたら此方は如何でしょうか?」
マリはすぐ傍の棚を開けそこから1本のペンを見せた。
「簡単に消せるアイライナー用のペンです、こちらでよろしいですか?」
「はい、お願いします」
「分かりました、少しお待ちやがれ♪」
マリは手に持ったペンを手早くラッピングし始めるがそこで蒼井の目を惹くものがあった。
「あの、すいません。こちらは?」
「コレですか?色葉さんが作ったシールですよ?」
勿論この時期に売り出されているのだからハロウィンを意識したものなのだろうが、それにしても色使いがどうにもサイケデリックな縫合シールは人目を引くものだった。
「これも簡単に外せますか?」
「はい、簡単に外せますよ」
「それなら、これもお願いします」
「お買い上げありがとうございます♪」
シールをカボチャ色の包装紙で包み、二つの商品が入った袋をマリは蒼井に手渡した。
そしてそのまま蒼井はあの小屋に駆け足で戻るのだった。

「お待たせしました、芽森さん」
軽く息を整えながら蒼井は小屋に戻りテーブルの上に買った道具を並べた。
「いろいろ買ったね、こっからどうするの?」
「はい、それでは芽森さん。少し目を閉じててもらってもいいですか?」
既にイメージは出来ているのか蒼井は月歌を椅子に座らせ手に持ったアイライナーで月歌の顔に少しずつ線を足していく。
(大丈夫、落ち着いて……)
逸る心を何とか抑え、ゆっくりと、確実に蒼井の手は月歌の目元を塗り替えていく。
それを両方に施し終わった後に月歌の頬に買ったシールを張り付けた。
「ん、もう目を開けても大丈夫?」
「はい、お疲れ様でした。芽森さん」
月歌が目を開くとそこには蒼井が鏡を用意して待っていた。
「え?何このシール!?」
「購買部で売ってたので、使って見たくて」
真っ先に月歌の目を惹いたのはそれだったが、それだけでなくアイライナーで目や頬に描かれた線や傷跡っぽいそれは確かにハロウィンのような特別感を醸し出していた。
「やるじゃん蒼井、ところでこのメイクは何かモデルある?」
「はい。フランケンシュタイン、部隊を超えて皆さんから力を借りれる芽森さんにぴったりかなと思って」
継ぎ接ぎの怪物として有名でもあるがそれを蒼井はポジティブな物として考えたのだろう。
月歌の人懐っこさや能天気なところ、それでいて時に頼もしく時に寂しさを表に出せない性分、それら全てが芽森月歌なのだと蒼井は知っていたのだから。
「そっか、ありがとう蒼井、ライブの時もお願いできる?」
「もちろん、任せてください」
夕日が少しずつ小屋の中に浸透していく。直に日は落ちて闇が小屋を覆うだろう
それまでの微かな時間、夕食のためにカフェテリアに向かうまでの空白の間に月歌と蒼井は幾度となくセッションを重ねていた。
弦を鳴らし合い、明日も知れぬ日々の中で思いついたメロディを作る。
千の夜を超える歌ならばいつか過ぎ去ったこの時もきっと楽しいものとして受け入れることが出来るだろうから

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