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明日世界が終わるって、そんなのあり得っこないんだから

 明日世界が終わればいいのにって思いながら過ごす日々は、とても楽しい。たぶん、嫌なことを考えず、明日終わる世界に想いを馳せられるから。

 明日世界は終わりっこないのに、終わって欲しいと願っている。

 月曜日の朝は憂鬱だ。早起きして会社に行き、土日に溜まったメールの処理からはじまる。肩は痛いし眠いしやる気は出ない。仕事が楽しくてたまらないって人を見ていると、だんだん憂鬱になってくる。

 社会人5年目になり、おおよその仕事の流れは掴んできた。若手には分類されず、後輩のフォローも必要になる。

 時の流れは残酷だ。いつまでも、使えない新人のままで甘ったれていたかった。

 仕事の愚痴を言っていても、病むほどに辛いわけでも、楽しくないわけでもない。8割しんどく、2割は楽しい。そういうものだ。

 ただ「明日世界が終われば、この日々から逃れられるのにな」と思う時があるだけで。

 世界が終わるなら、私は仕事を休んでお布団でいちばん幸せな夢を見る。それから美味しいご飯を食べて、友達や家族と笑いながら話しをしたい。

 世界が終わる時、できれば痛くも辛くもない方がいいから、できるだけ楽に終われるようにずっとずっと眠っていたい。

 そんな妄想をしながら、明日の準備をして電気を消して目を閉じる。世界が終わって欲しいのに、終わらないと知っているから。

 世界は終わらないと信じているから、私は未来の予定を埋め、それだけを楽しみに生きている。明日が同じようにくることを、当然のように信じている。

 世界では戦争が起き、人が死ぬ。あるいは、明日を生きれるかわからないほどの僅かな食料で命を繋いでいる。明日、殺されるかもしれない人もいる。病気によって死ぬかもしれない人もいる。命を断とうと決めた人も、きっといる。

 どんな形でも世界が続いていくのであれば、それは平和で幸福で何事もなくただ続いていくものであって欲しい。

 いっそ世界が滅亡してくれた方が私たちは幸せかもしれないなんて、そんな悲しいことをあらゆる人が口にしなくて済むように。ただ、未来の予定を楽しみにできるように。

 暖かい布団から抜け出して、ひやりとする床を踏む。今日がはじまる。

 しょうがないから、生きてやるか。まだ、世界は続いているようだから。

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