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浮世の月見過ごしにけり

朝のニュースでは、ゆうべの月蝕の模様を伝えているが、西向きのベランダに新築されたマンションのために見過ごしてしまった。そのかわりに脳裡をよぎったのが、月蝕領主中井英夫のことであった。

年譜によれば、昭和53年(1978)の誕生日(9月17日)の皆既月蝕を期に「月蝕領主」を称したとある。以後、8年のちまで異名を称したが、昭和61年(1986)4月、前日(4月24日)の皆既月食を見損ね、「月蝕領主」の名を放棄した、とある。

その7年後の1993年に没したが、年を享けたのは1922年とあるので、奇しくも今年が生誕100年であったことを知らされた。ゆうべの月蝕は、三大奇書の一つ『虚無への供物』への讃歌だったのだろう。そう思うことにした。

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