イメージは「マイラー寄りの◯◯」? 種牡馬キズナが伝える資質

 先週の函館2歳Sはキズナ産駒のビアンフェが優勝。新種牡馬の父に初めての重賞勝利をもたらしました。この機会に、一度キズナについてじっくりと考えてみましょう😊


 まず最初に、いちばん重要なポイントをお伝えします。キズナという馬は、競走馬時代と種牡馬時代では資質が変わっている可能性があります。あくまでも現段階の少ない産駒の印象から推察したものですが、個人的には “ダービー馬・キズナ”のイメージはもたないほうが良いのではないか?と感じています。

 現役時代のキズナは、父の『ディープインパクト』と母の父『ストームキャット』による、柔らかな体質が特徴的な競走馬でした。またこのような体質は「非力さ」というデメリットとして伝わりがちなのですが、キズナの場合は2代母の父『ダマスカス』の頑丈なパワーが土台を固めているため、非力さが表面化していません。ディープ、ストームキャット、そしてダマスカスの3血脈が絶妙なバランスで成り立つことにより、柔らかさを純度の高い切れ味として昇華させていました。

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 しかしこれが種牡馬になるとバランスが変わります。というのも、キズナの父ディープインパクトは種牡馬としては切れ味に秀でたタイプですが、祖父の代に下がると重厚なパワーを色濃く伝えるようになるのです。

 重厚感を増したディープは、ダマスカスのパワーに寄り添うかたちでタフな底力を担当。柔らかさをストームキャットだけで支えることになるため、スパッと切れる俊敏性が衰え、ワンペースのスピードタイプに変容します。現役時代のキズナの資質は、ディープが切れ味を担当していたからこそ成り立っていたものですから、種牡馬キズナの資質とはイコールで繋がりません。

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 ただ良い意味で意外だったのは、産駒で勝ち上がっている4頭のうち、3頭が1400m以下の距離で勝利していること。キズナ自身はダービー優勝など、ミドルディスタンスホースとして活躍した馬でしたから、産駒もこのあたりの距離が主戦場になるだろうと見ていました。父ディープの切れ味が陰るぶん、もっとダラっとした緩い柔らかさを伝えそうで、個人的には「芝適性を強めに出すシンボリクリスエス」のようなイメージで捉えていたのですが、実際は想像以上に“脚の速さ”を伝えています。

 これはおそらくストームキャットの資質が前面に出るようになったからでしょう。現役時代のキズナにとっては、主に柔らかさとして表現されていたストームキャットですが、本来この血はアメリカ血統らしい一本気なスピードに長けています。このあたりの前向きさが強く伝わるのであれば、短めの距離に対応できるスピード馬が出るのも納得です。

 さきほど僕は種牡馬キズナのことをシンボリクリスエスと例えましたが、産駒の走りをみたうえであらためてイメージすると、「マイラー寄りのヨハネスブルグ」のほうが近いかもしれません。ヨハネスブルグもストームキャットのスピードとダマスカスのパワーで構成された種牡馬。前向きなスピードを産駒に伝えています。

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 ディープインパクトの後継種牡馬は、ディープの切れ味が薄れる影響で、総じてスピードよりもパワーを強く伝えています。そんななか、キズナがストームキャットのスピードを伝えていることは、今後の種牡馬生活を考えるうえで大きな武器となるはずです。

 僕はヨハネスブルグが大好きなのでこういうタイプは大歓迎ですが、現役時代と印象が変わってしまうのはファンにとって残念なことかもしれませんね。ただ、いまは仕上がりの早いスピード馬が活躍していますが、いずれは中距離の大物もでてくるでしょう。そういう馬にはストームキャットがどういう伝わり方をしているのか。それも含めて種牡馬キズナの今後が楽しみです。

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