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君の物語 23 真顔


ルゥはいつも、真顔で挨拶する。

廊下などですれ違うとき。
部屋に入ってくるとき。
ムギのはだけた布団を直しているときは枕元から、またはムギの椅子から半身起き上がって〈ニャッ〉と声を掛けてくる。

最初はそのキリリとした顔に〈何故か知らねど怒られている?〉と思っていた。「僕のムギに何をする!」と咎められているのかと。

でも、コハクとムギが教えてくれた。
それは挨拶してるんだと。
大真面目に。

猫ってみんな、そうなんだろうか。
大真面目に挨拶してくれるなんて、とても素敵じゃないか。

そしたら見え方が変わった。
〈ニャッ〉と挨拶されると
「お、ごくろう!」
と声を掛けられている気分になって、嬉しくなる。

とらえ方ひとつでこうも変わるなんて、
勝手なもんだ。
ねえ、ルゥ。
本当のところはどうなの?

う〜ん、これじゃ真顔でなく
〈たくらんでる顔〉ですね…


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