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君の物語 1

皆、幾つもの物語をもっている。
"ルゥ"もそうだ。


彼のお母さんによる物語。
きっといたであろう、兄弟たちとの物語。

雨の中、子猫に遭遇したナミさんによる物語。
子猫の命を救おうと治療費をカンパし合った仲間たちが見守った物語。

その子猫を家族に迎え、『ルゥ』と呼んだ私たち。
触れ合おうとしては逃げられていた夫から見た物語。
猫との距離の取り方が程良かった長女コハクの目に映った物語。
ルゥとは強い信頼で結ばれた、次女ムギが紡いだ物語。

なにより、ルゥ自身にしか知り得ない彼だけの物語。

これから書くのは、あくまで私の目線から見たものであり、いくつもある物語のうちのほんの一部にしか過ぎない。

私にとって君との時間は、ひとつひとつが幸せでできていた。

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