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Hiroe Saeki 四曲屏風-Folding Screens-

画家の佐伯さん(Hiroe Saeki)との出会いは、現代的ではあるが、実に面白い。
いつものようにInstagramを見ていると、AIが集積した私好みのpostにふと出てきた佐伯さんの作品に魅せられたことから始まります。

Untitled ・2022/Hiroe Saeki

第一印象、ただただ格好良い。
書や日本画と深く関わりのある私がこのような稚拙な表現では叱られてしまいそうですが、、
しかしながら、ファッションも音楽もアートも製品も先ずは、格好良いことが私の正義なのです。
その意味では、佐伯さんの作品は圧倒的でした。
最初は、Instagramの内容が全て英文だったので、外国人だと思っていました。ただ何故だか和のエッセンスがある様な気がして不思議な感覚もあったのです。

その時に漠然と、佐伯さんの作品を表具(屏風)にしたら、、などと淡い気持ちが芽生えました。
でも、海外の方へどうアプローチをすれば良いのだろうと躊躇しました。と言うよりも表具師は、『受け身の美学』と貫いてきた私が作家さんに提案することなど無礼極まりないと思っていましたから。
※受け身の美学については深い持論があるのでまだどこかで説明します

一日踏み出してみようとしたら

受け身も良いが、表具師人生で二度三度くらいなら能動的になっても良いかなと、その日の仕事終わりに佐伯さん(その時点では外国人)へDMしようと心に決めました。
仕事中は、作業しながらDMの文言をひたすら考えていました。作業も一段落しPCを開いてみると、メールボックスに信じられないメッセージが綴られていたのです。
佐伯さんご本人から表具についての問い合わせがっ!!!
空いた口が塞がらないとはこのことです。笑
奇跡というか、シンクロニシティというには烏滸がましいですが。

メッセージはとても丁寧な言葉で綴られており、マルセイユ(フランス)在住の日本人の画家の方でした。作品を見た時の不思議な印象がそこで点と点が線に繋がったような気がしました。格好良いは国境を越える。
これは、2022年3月21日の出来事です。

陰翳礼讃

一時帰国

メッセージには、その年の4,5月に一時帰国する際に私の工房へご来訪したいという旨も書かれていました。
何か上手く行く時は、色んなことがスムーズに流れていく様な気がします。

ほどなくして、岐阜県関市(アクセスの悪い田舎)へ佐伯さんは現れました。
とても気さくで朗らかな印象でした。それと同時に、なるほど!この方ならこんな素晴らしい作品を描けて当然だと思える空気感を持ち合わせておられました。
気が付けば、2時間は過ぎていただろう、話は尽きない。

生まれも職種も違っていても、大事にしているコアは同じだと話していて本当に楽しい。(私が言うのは大変烏滸がましいと理解しています)
その後、美濃町(うだつの町)の旧家へ行くこととなり、そこでまた素晴らしい人とのご縁があるのですが、長くなってしまうので今回は割愛します。

下の写真は、そのご縁で繋がったロケ地(鈴木家)で撮影したものです。

美濃町の旧家(鈴木家)

マルセイユ→岐阜

佐伯さんが帰国されて、半年ほど経った頃に私の工房へ4枚を一つの作品とした、マスターピースが届きました。
言葉で表すことが勿体無い、、、それだけです。
これを表具にすることが出来るなんて夢の様だ。私の全てを注ぐことを決めました。
佐伯さんとは、メールで何度も打ち合わせをしました。そのやりとりのお陰で色々な学びや発見もあり、表具師としての巾が広がりました。

Hiroe Saeki 2022

Production Video

その巾の広がりの一つは、屏風の制作動画(production video)を作ることでした。手仕事を伝える上で、テキストや話すことも大事ですが映像は、言語が違っていても世界中の人へ簡単に伝えることができます。このマスターピースへのせめてもの恩義でもあります。

幸い私は、普段から写真や動画を撮っては、レタッチや編集することが日常でしたので、屏風制作はもちろん、写真・動画の撮影編集も全て一人で行いました。いずれも三ヶ月掛かりました。(カメラに関しては、プロではないので悪しからず)

フランスへ

2022年に出会い、2023年に完成し、2024年にようやくフランスへ屏風が旅立ちます。
これから、この屏風はどんな景色を見ることになるのだろう、とても楽しみです。

結びに、このご縁を頂いた佐伯洋江さん、そしてロケ地としてご協力頂いた方々へ、心より感謝申し上げます。

いざ、フランスへ。

陽の光を和らげる和紙

佐伯洋江(Hiroe Saeki)

マルセイユとベルリンを拠点に活動。
2004年、グループ展「見えない鳥」タカ・イシイギャラリーでデビュー。
その後、国内の数多くのグループ展に出展する。
2006年「VOCA展」上野の森美術館 (VOCA奨励賞受賞
2007年「線の迷宮2」目黒区美術館
2008年「ARTIST FILE」国立新美術館
2009年「Winter Garden」原美術館
2011年「Art Scope」原美術館
2019年「Annex展」POLA Museum Annex など。

海外では、
2006年「Hiroe Saeki」Almine Rech Gallery, Paris
2010年「The 242nd Summer Exhibition」Royal Academy of Arts, London
2018年「Visions of Exchange」Daimler Contemporary, Berlin
2019年 個展「Cosmogenesis」Daiwa Foundation Japan House, London など。
2022年より活動の幅をインドや中東にも広げている。
2023年、個展「Divinity, Duality and the Cosmos」が Galerie Isa, Mumbaiで開かれた。
主なパブリック・コレクションに、ニューヨーク近代美術館、UBSアートコレクション、ダイムラー・アートコレクション、ドイチェバンク・アートコレクション、トヨタ・アートコレクション、原美術館などがある。

Hiroe Saeki Instagram →  https://www.instagram.com/hiroesaeki/

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