ネコは僕と#29

マイマイはエサを食べる時、ちらちらと僕のことを見る。食べ始めてから僕が居なくなると、今あるエサは食べたいという姿が見られる。
しかし食べている途中から、居なくなるもしくは隠れると、探し始めるのだがエサも食べたいという忙しない光景を目にする。
「エサを食べている時くらいそっとしてあげろよ」
と、弟から言われたことがある。確かに、僕が食べている時に何かちょっかいを出されたとしたらそれは嫌なものだった。
他のネコと比較をしたことがないのだけれど、マイマイは食べるのが早いかもしれないと思った。よく噛んで時間をかける食事は、食物連鎖の上位にいる生物だけであり、それは狙われる恐れがないからでもある。
つまり逆を言えば、下位の生物は食事中に襲われる恐れがあるからこそ、短時間で素早く食べるとも意味取れる。

もともとネコ科は、次は食べられるか、ということよりも、今これを食べなければならないという思考でもある。次があるかもわからないのだ。縄張り意識も高いため、捕食した獲物が横取りされないためにも早く食べる。
そう理解しながらも、僕はエサを食べ終わっているマイマイを見た。
家ネコ、飼いネコであればエサの時間もあれば、量も安定している。いわゆる、生活が保証されていることになる。しかし、その環境下でも野生としての、本能としての思考は代々継がれているのだろう。

人には、趣味として食事をする者、時間に追われ早く食事をする者、ナイフやフォーク、スプーンで流暢に捌き食事をする者と様々である。建物に囲まれて、何かに狙われることもなく歓談、談笑、交渉など取り交す。食物連鎖の頂きにいるわけだ。

食べ終わりの合図である前脚を舐め、そしてこちらを見ている。
僕は何も言わず、ソファをポンポンと鳴らして、こっちにおいでのサインを送る。
それに反応したマイマイは、音のしたソファへ飛び乗る。
落ち着いた証拠でもある喉の鳴らしが、いつものように僕の胡座に伝わる。
まさに『虎の威を借る狐』ではなく、『人の威を借る猫』のような雰囲気が漂っていた。

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