ネコは僕と#27

仕事から帰ってくると、リビングのドアを開ける。これはみな同じ行動であり、動作でもあり、行為でもある。しかし僕にはこのドアを開けると、小さく白いネコが待ってくれている。ほらね。
「ミー」
——おかえり。
と、マイマイは出迎えてくれた。弟は夜勤ということもあり、僕と入れ替わるように家を出るところだった。
「じゃあ行ってくるわ」
弟は、マイマイの頭をぽんと撫でて玄関に向かう。
「ミー」
——いってらっしゃい。

僕は仕事着から部屋着に着替え、手洗いうがいする時も僕の後ろを追いかけてくる。冷蔵庫に飲み物を取りに行くにも、後ろにいて、ソファに向かうと僕を追い越して先にソファに乗る。
少しだけ、ちょっとだけイタズラをしてみる。僕はソファに座らず、忘れ物をしたようにまた冷蔵庫に向かう。
——あれ?来ないの?
マイマイは、ソファに座るもこちらを見ている。そして、また僕の足元までやってくる。
冷蔵庫の扉を閉めて、ソファに向かう。そうすれば、マイマイは僕の後ろではなく、前に出てくる。やっぱり。だから僕はソファに向かう足を止めてみる。
——早く早く……、あれ?
そんな顔で僕を見上げる。僕が来ないことに気づいて、マイマイは戻ってくる。
「ミー」
——早くあそこに行かないの?
僕を見上げては、ソファへと視線を移す仕草を見せる。僕はこのイタズラに満足をし、素直にソファへと腰を掛ける。
「ニャッ」
やっとソファに、まどろっこしいイタズラに、感情が複雑だったのか、普段とは違う鳴き声がした。

これでもか、というくらいにマイマイは、自分の額を僕の腕にぶつけてくる。
腕もそうだが、肘に当たる時もある。肘のとある部分に当たると、腕全体が痺れる現象が起こる。ファニーボーンと呼ばれる現象だ。
まさに、時すでに遅し。
マイマイの額は、僕の肘に当たり、次いではファニーボーンが起こる。
「ああっ……つぅぅ」
「ミッ」
——仕返しだ。
ビリビリとした肘を抑えながら、僕はマイマイを見る。ちょこんと座って、こっちを見ているマイマイは、前脚を舐めて始めた。

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