ネコは僕と#26

目覚めの悪い朝となってしまった。確かに僕は、左を向いて寝たはずだったのだけれど、今の僕はどうだろうか。左を向くどころか、上下反対になっているではないか。枕に足を乗せ、足元に頭がある、とは寝相が悪い。寝相が悪かったと言わざるを得なかった。
カメラでも設置して、僕がどのように反転したのかを確認したいほどだった。
マイマイは僕の右にいる。反転していなかったのなら、寝る前とは変わらない位置にいた。しかし今は右にいる。
僕が体を起こし、ため息ひとつ付くと、マイマイも体を伸ばしてはひとつ鳴く。
「ミー」
「大丈夫だったか」
これほど寝相が悪かったのだ。少なからず、マイマイに何か、僕の腕や足とやらが当たっていないか気になる。
——すごかったよ。
皮肉めいた表情に見えた。僕のことを、そのまん丸な眼で見ていたわけだが。

僕は部屋を後にし、階段まで行く。マイマイも僕の後ろを付いてきては、階段の前で止まる。
「降りれないか」
「ミーミー」
赤ちゃん、いや子供のように抱っこを求めるような声と表情だ。
僕はマイマイを抱え、一緒に階段を降りる。リビングには相変わらず弟が、ソファで寝ている。以前であれば、僕はこのまま寝ている弟のお腹の上にマイマイを置くのだが、今日はそれをしない。弟を通り過ぎ、ゲージ内のクッションに下ろした。
「シャワー浴びてくるから」
今日は仕事でもあり、流暢にしていることもできなかった。

昨日はあれから、マイマイは少しだがエサを食べていた。完食までは言えないが、七割ほどは食べていた。残ったエサは取り除き、新しいエサを入れる。
乾いた音に反応してか、マイマイはこちらを見ている。昨日とは違って、反応してくれるだけでも安心へと変わっている。
獣医から渡された薬を、注射器の規定メモリまで吸い上げ、エサにかける。
そして、エサをマイマイの目の前に置いて、
「ちゃんと食べなよ?行ってくるね」
仕事用のバッグを持ち、リビングを後にするのだけれど、僕は振り向かなかった。
しっかりとマイマイはエサを食べていた。トレイとエサが擦れる音、噛む音が後ろから聞こえてきていたのだ。

食欲が戻ってきてよかった。ただでさえ体が小さいのだ。
一緒にいるからには元気でいてほしい。

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