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【詩】六畳間の朝

もう二度と返らぬ日々が

薄い朝日が差し込む部屋の片隅に

陽炎のように立ち上がってきて

私の方をじっと見つめる。


息を吹きかければ

たちどころに散じそうな幻

されどその視線は

鋭く力強く

そして怨みがましい。


私の遺棄してきた

無数の欠片が

生きるために放棄してきた

数えきれない思い出たちが

怨嗟の声をあげる朝。


棄てなければ生きていけないが

忘却の果てに沈めたら

私が私でなくなってしまう。


私は生きていない。

死んでいないだけ。


でも私が棄ててきた

思い出の澱のカス

ドロドロした暗黒色の記憶

そんなのと向き合う時だけ


生きることができる。

悲憤渦巻く劣情と共に。


夜明けは暗い。

空には厚い灰色の雲が

垂れ込めている。


生きる気力を

根こそぎ削ぎ取るような

いつもの朝。


喉奥から

絶望と憤りを押し殺した

叫びをあげて


今日も私は生きる。

少しだけうつむいて

憤りと虚しさのままに

歩むのだ。

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