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爪弾く昼下がり

じゃらんのポイントが今月末で切れると通知が来た。
1000ポイント。有効活用したい。
できれば1000ポイントジャストで使い切りたい。
果物狩り。陶芸。興味あるジャンル、かつ近場で楽しめそうな何か。うーん何しよう。

考え抜いて捻り出したのがこれ。
「小唄三味線体験」

三味線の音色が好きだ。
青森を旅したとき、生演奏も聞いたことがある。いいよね、津軽三味線。
でも…小唄って何だろう。
分からないけど三味線はこれしかヒットしないし、ポイントで足りるから予約しちゃえ。
そんな気持ちで出かけたのが先週の土曜日。

都内某所。
最寄り駅は新宿御苑だ。
体験は1時間で「 講義30分、実技30分」とのお知らせが届いた。
いきなり三味線に触ることはせず、まずは歴史を学ぶそうな。

先生は推定70歳前後の男性。
一対一で向かい合う。
講義のプリントを渡され、まずは三味線の伝来の歴史から。
日本由来の楽器かと思いきや、中国から伝わってきたんだって。「三紘(サンシエン)」が原型。室町時代に渡来し、江戸時代に大きく発展。なんかもう日本史の授業みたいだった。驚いたり頷いたりして聞くこと30分。
ようやく私の手に三味線が。

で、どうやって持つの?

持ち方や姿勢、手の位置を教わり
開放弦(弦をおさえずに弾くだけ)の練習から。ピアノをやっていたから楽譜は読めるけど、三味線は五線紙ではない。三線しかない。この印はどの糸を弾けばいいの?
軽くパニックになりながらも手を動かす。
リズムを繰り返すうちに何とか弾いているような形になった。

先生と一緒に繰り返す。
やがて先生が歌い出す。
♪うーさーぎーおーいしーかーのーやーまー
「ふるさと」だ。知ってる歌はつかみやすい。
♪はーるーこーおーろーおーのーはーなーのーえんー
「荒城の月」。
果ては「東京音頭」まで出てきた。
もう先生の歌の伴奏者みたいである。楽しくなってきたところで30分終了。

小唄はバチを使わない。爪弾くのだ。
私の爪は薄くて弱い。どうなんだろう。楽しかったけど耐えられるのか。

幸い勧誘もなく、楽しく終えることができた。先生も感じの良い人だった。

帰り、新宿御苑に寄り道した。
ソメイヨシノではない桜が咲いていて、観光客が群がっている。

寒いので温室に入った。
緑の空間は酸素で満ちている気がして安心感がある。
目にも優しい。深呼吸したくなる。

昔読んだ小説を思い出した。(狗飼恭子「南国再見」)
この温室で、なくした恋人の思い出をたどる話だった。あれから20年以上経過して、ようやく私も新宿御苑の温室に来られたのだった。




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