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夜明けの放屁を君と一緒に

どんなに誠意や愛情を込めてもそれに対する相手からの見返りはけして等価とは限らない。
勿論、
「見返りだけ求めてやってるワケじゃないし別にいいもんね」
と割り切る事は出来る。
割り切る事は出来るが、やはり何とも言えないモヤモヤが残るときがあるのも事実だ。

僕なんて娘からの
「抱っこして」
「おんぶして」
「お馬さんになって」
という各種要求に嫌な顔一つせず対応し、
古来より一家の主が所有できるとされているチャンネル権すら快く譲り渡し、
スマホのアプリを勝手にアンインストールされても一切怒らず許しているというのに、
たった一度だけのミスで、
「パパのお馬鹿。パパなんて可愛くない。パパなんかもう知らない。」
と散々な言われようである。
出勤前、今からまさに家を出ようとしている瞬間の「ベルト貸して」とか断るに決まってんでしょうよ。何そのタイミング。秒で飽きるくせに。

と、このように。
うちのようなごく普通の一般家庭でもそれくらいの事はあるのだから、
世間ではもっともっと腐る程にこういった不条理が溢れている。

一料理人として
「この食材をもっとこう調理して、より美味しく食べてもらいたい」
と日々試行錯誤を繰り返しても、
「結局、塩かけて焼いて食うのが一番美味いよね」
とか言われちゃったり、
老舗旅館の名女将がどんなに誠心誠意の接客でもてなし、
最後に最高のお見送りをしても、家に帰れば
「あー、やっぱり我が家が一番♪」
とか言われちゃうケースは往々にしてあるのだ。

これだってそうだ。
僕が何時間もかけてネタをくって、実際に文字を打ち込み、
何度も推敲を重ねてようやく記事を更新したところで、
結局はうんこしっこの話の方がめちゃくちゃウケるものなのだ。
これはもうある種、真理だ。
やるせない。でも仕方がない。真理だ。

では逆にこう考えてみよう。
「いつものように何時間もかけてうんこしっこの面白い話を書いたら、
掛け算的に超絶面白い記事になるのではないだろうか」
と。
(なんかまた間違った方向に進んでいるような気もするけど)

というワケで。
今回は屁の話で一つ記事を書こうと思う。
もう書くったら書く。

僕がまだ小学生だった頃、
弟と一緒にお風呂に入っていた時の話だ。
先に湯船に浸かっていた僕に遅れて弟が体を洗い終え、
浴槽を跨いだ瞬間にそれは起こった。

よくある
「ぷぅ」とか「ぶりー」とかならまだわかるが、
弟の尻から聞こえた音は

「BOMB(ボム)」

だった。

僕は戦慄した。
直訳したら爆弾である。
恐ろしい。もはや兵器だ。

僕は息ができなくなるくらい笑い転げ、
そしてそれと同時に、この
「おならが喋る」
という特殊能力を持つ弟に末恐ろしささえ感じていた。

しかしその約十年後。
その特殊能力は彼特有のものではなく、
我が一族の誇り高き血統によるものだと思い知る事となった。

バイト中に便意を催した僕はトイレの個室に駆け込み、
便器に座って「いざ」と戦闘態勢に入ったのだが、
急にお尻の方から可愛らしいアニメ声で

「PURE(ピュア)」

と聞こえた。
一瞬何が起こったのかわからず唖然としていたが
コンマ数秒遅れてそれが自分の尻から放たれた音だと悟った僕は、
トイレの個室で用を足すのも忘れて一人でしばらくクスクス笑ってしまった。

さて、ここで僕は一つの疑問を持つ。

「過去におならが喋るという経験をしたのは僕(と弟)だけなのだろうか?」
と。

一度気になったら居ても立っても居られず、
当時やっていたSNSであるmixiにて近況報告がてら似たようなケースの体験談を募ったのだが、
まぁ出てくる出てくる。おならが喋った報告例が。
しかも意外なことに女性からの報告が多くて驚愕した。

あまりに面白くて今でも鮮明に覚えているのが幾つかあるので、
せっかくだしここで紹介させて頂く。

まず
「パンプス」
オシャレである。
シンプルさの中にあるちょっとした遊び心が良いアクセントになっている。

次に
「パブ」
大人の社交場を発する事によって、
アダルトな魅力を演出した見事な作品。
そろそろ、いつもの
「俺は一体何を必死に書いてんだろう」
という気持ちになってきた。まぁいいや。

お次は
「スープ」
気体なのにスープというギャップが堪らない至極の一品。

極めつけは
「VAIO」
パソコンの大手メーカーさえも参入してくるほどの市場になっているとは思わなかった。
僕の知らないうちにここまで事が大きくなっているとは。
もう最高。VAIOとか。どんな屁だよ。どんな業を背負ってんだよ。

とまぁ、そんな感じで。
本当にいろんな体験談が寄せられ、僕はその一つ一つに爆笑させられた。
そして全部読んでひとしきり笑った後に
「俺の周りこんな奴ばっかじゃねーか…」
と若干落ち込んだ。

数日後、たまたま電話をくれた地元の友人とこの話になった際に
「あ、俺もあるわ。それ」
と、しかもけっこう最近同じ体験をしたとの報告を頂けたので、
最後にその事例を聞いてこの件は終わりにしようと思い
「マジで?なんて喋ったの?」
と尋ねたところ、友人はこう答えた。

「Perfume」


というワケで、聴いてください。
Perfumeでポリリズム。

(ファンにタコ殴りにされそうなので急いで雲隠れしますね)

お金は好きです。