見出し画像

MAD LIFE 305

21.ワーストチャプター(2)

1(承前)

「今日はどんな予定なの?」
 真知が中西に尋ねる。
「もし時間が空いてるなら、映画でも観にいかない?」
「ごめん。今日は三時から約束があるんだ」
「約束?」
 真知はきょとんとした表情を中西に向けた。
「なに? 約束って?」
「いや……えーと……」
 鼻の頭を掻きながら答える。
「ちょっと友達とね……」
「そう」
 真知は怪訝そうな視線を中西に投げながら立ち上がった。
「だったら私、今日は帰るね」
「あら、もう?」
 美和が残念そうにいう。
「もっとゆっくりしていけばいいのに」
「いえ、今日はこれで」
「真知……これからも来てくれよな」
 中西は照れながら真知にそう告げた。
「もちろん」
 そう答えた真知の笑顔は天使のようだった。

 ……春日友恵。
 校庭で行なわれているソフトボールの試合を眺めながら、俊は考えごとにふけっていた。
 屋根裏部屋から見つかった手紙。
 筆跡は父さんのものだった。
 そこに知るされた詩のような文章。
 あれは一体、なんだったのだろう?
 なぜ、こんなにも気になるのだろう?
「こら、春日!」
 たぶん、あの詩のせいだ。
「春日! どこを見てるんだ?」

 (1986年6月13日執筆)

つづく

この日の1行日記はナシ 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?