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MAD LIFE 325

22.歯車は壊れた(6)

3(承前)

「ねえ……」
 独り言を呟く。
「私、これからどうすればいいの?」
 しかし、答えてくれる者はいない。
 瞳はその場にうずくまり、声を荒らげた。
「誰か教えてよ! 私、どうすればいいの?」

「だから誤解だって」
 中西は嫌がる真知を強引に喫茶店へ連れ込むと、懸命に弁解し続けた。
「俺はあの娘を愛してるわけじゃない」
「愛してない? じゃあ、あの娘を見つめるときのあなたのあの目はなに? あれが恋する目じゃないというのなら、この世に愛なんてものは存在しないわ!」
「頼むから冷静になってくれ」
「あたしは冷静よ。取り乱してるのはあなたのほうじゃない」
「やめだ、もう。これじゃあ話にならない」
 中西はため息をつき、背もたれにもたれかかった。
「ええ。私もあなたのみっともない言い訳なんて聞きたくもないから」
 真知はそう口にすると、勢いよく立ち上がった。
「時間の無駄。あたしは今、あなたのことなんてどうでもいいの。それよりもパパのことが心配。じゃあね、さようなら」
 大股でその場から立ち去ろうとする。
「ちょっと待てよ」
 真知の左手をつかむと、彼女はものすごい形相で睨みつけてきた。
「なに? まだなにかいいたいことがあるの?」
「ああ、山ほどあるさ」
 中西はいった。
「俺が愛しているのはおまえひとりだ」
 次の瞬間、真知のびんたが飛んだ。
「悪いけど、あたしはあなたを愛していないわ」

 (1986年7月3日執筆)

つづく

1行日記
7月6日は水泳の記録会! 7日までテスト……



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