マンガに現実の音楽が引用されるとなんか嬉しいよねって記事④


不定期連載の第4回です。記事のポリシーについては第1回をご参照ください。




ひとつ前の記事はこちら。



最終回なので、在庫処分でちょっと量多め。





⑩大瀧詠一 / 『恋するカレン』




引用先の作品


小学館、ゆうきまさみ
『機動警察パトレイバー』
少年サンデーコミックス第6巻より


作品解説


メディアミックス展開のマンガ版。


自分はリアタイ世代じゃないけど、それでも幼少期にカートゥーンネットワークでTV版がやってたり(あの局は放送番組のアイキャッチを独自に作ってたので、なんとなく印象に残りやすかった)、親が買ってきた踊る大捜査線のパンフにパト2についての言及があったり等(ソース無し。違ってたらすいません)、結構な頻度で作品名が自分の人生に割り込んで来てた印象。


マンガ版はゆうきまさみ氏の誇張3:写実7ぐらいな配分の絵柄と、丁寧な描写の積み重ねでドラマを組み立てる作風をベースに、誉められたものじゃない社会の俗っぽさ(経営者と労働者の対立、企業派閥、組織人の悲哀、汚職、警官と犯罪者の恋愛など)がブレンドされた結果、よく言えばリアル、悪く言えばどこか煮え切らない独特の読み応えになっています。加えて小学館発行のマンガは多くの場合、教育的配慮なのかセリフに句読点をちゃんとつけるという特徴があるため、それもスピード感やテンポの減衰に繋がってるカンジ。



大人目線で一気に読めばちゃんと面白いんですけど、当時サンデーでリアタイしてた少年少女がどんな感想を持ってたのかはすごく気になるところです。


ただコミックス7巻~10巻で展開される『廃棄物13号』シリーズは、五十嵐大介の『SARU』と並んで巨大怪獣モノにおける指折りの傑作なので、特撮好きで未読の方は是非。


引用箇所の考察



同上、P146より


主要人物のひとり、太田功巡査が入浴中に口ずさんでた曲。


前後の文脈との関連性は特になく、連載当時(1989年)で既に発売から8年経過してるこの曲に時事ネタとしての効果もなさそうなので、今回の引用はキャラクターの掘り下げが主な目的なんだと思います。


マンガにおいて公共の場でも構わず歌うキャラが出てきた場合、

[1]ジャイアニズムに象徴される自信や横暴さ
[2]浮世離れした感じ、滑稽さ

が背景に設定されていることが多く、太田巡査の場合は[1]がより強調されています(一方で[2]の要素は警察組織内での異端者かつ、おじさんキャラという強力なトリックスターでもある後藤隊長に割り振られていて、こちらも作中でHOUND DOGの『AMBITIOUS 』や、浜田省吾の『J.BOY』を口ずさむシーンがあります)。微妙に歌詞を覚えてなくて、途中から適当に歌って平然としてる辺りがかなり質感高いですね。


加えて選曲を演歌とかじゃなくてシティポップにすることで、強面だけど実はまだ若者、というこのキャラクターの多面性も端的に表現できていると思います。


この辺のギャップ要素はTV版だと架空アイドルに対するドルオタ的描写をもって演出してるんですが、それだとちょっと記号的要素が強過ぎな気がするので、個人的にはマンガ版の方が、実在曲を使ってる分色々と想像の余地があって好きです。太田巡査の性格的に大瀧詠一のコアなファンとは到底思えないし、たまたま『A LONG VACATION』がバカ売れしたから聴いてるだけっぽいな、とか、そもそも音源自体手元に持ってなさそうだし、ラジオかTVで聴いたきりだから歌詞がうろ覚えなのかな?とか。


ちなみにこの作品の舞台はスーパー系ではなくリアル系のSF近未来なので、現実世界と地続きであることを示唆するため、意図的に実在の曲を入れた、という可能性もありえそうです。ただその場合劇中時間は連載開始から+10年程度が想定されているため、この曲の懐メロ具合がとんでもないことになってしまいますが…。



⑪John Williams / 『Flying Theme』



引用先の作品


白泉社、宇仁田ゆみ
『ゼッタイドンカン』より


作品解説


うさぎドロップの作者による1巻完結もの。音感のいい瀧さんと、鈍感が過ぎる中森くんの恋愛模様を丁寧に書いた作品。


この作者は傍から見たらちょっとだけニッチなテーマを選びがちだったり、ともすれば残酷に感じるぐらい劇中の時間を進めて登場人物に歳をとらせたりしがちなんですが、太くて力強い描線と、シンプルだけどハンコ絵とも違う絶妙な作画を駆使して『この世界は頑丈で奥深いから、何が起きてもあなたたちは大丈夫だよ』という安心感のフィルターを画面全体に掛けてあげることで、日々の積み重ねやちょっとした小ネタを思う存分楽しむ余裕が作品に生まれ、それが結果として読者の共感にも繋がっている気がします。


本作はそんな作者の魅力が100%発揮されている大好きな一冊。自分は普段から旧裏をはじめ過去の妄執にとらわれ続けてる人間なので、中森くんの『一度好きになったものはずっと好き』というスタンスについつい共感しちゃうんですよね。


あと瀧さんと中森くんの結婚して子供ができても頑なにお互いを名字で呼び合う関係性に、『変わるものと変わらないもの』という作品を通したテーマが凝縮されててグッときます。


引用箇所の考察


同上、P77より


いつも同じようなパーカーばっか着てる中森くんに向けて、E.T.のエリオット少年みたい、と瀧さんが言ったことに端を発するエピソード。


E.T.もスター・ウォーズもジョン・ウィリアムス作曲故にフレーズが結構似てる、というネタ。『れ』が一個多くあるかないかの違いだけで、知ってる人にはそれぞれ違う曲で再生されるのが興味深いです。


脳内で流れてる曲の正体を知りたくて、近くにいる人にオノマトペで例示、というのは現実世界でもあるあるだと思うんですが、オノマトペにもダダダ、ジャジャジャ、タララ、デデデ等その人それぞれでいろんな派閥があって、そこの言語がお互い共通してないと難易度が若干上がるんですよね。自分も妻と時々こういうやり取りになることがあるんですが、自分はナナナ派、妻はフンフン派なので大体伝わらないです。ディスコミュニケーション。


そういう意味で瀧さんと中森くんはふたりともテレレ派なので相性がいいですね。あと最後のコマで瀧さんが笑ってるのはピアノの上手い中森くんが実は音痴だということに気づいたからなんですが、これは絶対音感持ちなのにピアノが下手な瀧さんとニコイチのペアであることの暗示になっていて、そもそも音痴がコンプレックスの中森くんが躊躇なく歌えている時点で、ふたりは現状かなり気の置けない間柄、ということがわかるようになっています。


このエピソードは作中だとふたりが正式にお付き合いする直前に挿入されていて、上述のとおり短いながらも今後の展開に向けて関係値を再確認する重要な場面のため、そこにマンガ以外の要素を絡めて読み手の印象に残りやすくする、という役割も今回の引用は担っている気がします。



⑫近藤浩治 / 『アスレチックBGM』(スーパーマリオワールド)




引用先の作品



幻冬舎、山田穣
『がらくたストリート』
BIRZ COMICS 第2巻より



作品解説


好きな絵柄が好きなことだけ延々としゃべってるマンガを描きたい!という、オタクの自家発電を商業誌でやりきった稀有な作品。


アニメ原画のトレースのトレースみたいな既視感あるタッチで描くあざとすぎる女性陣と、脱臭してなお鼻につく感じの消えない男性陣が送る日常系を隠れ蓑に、数ページに1回オタクくんの早口雑学が誰も聞いてないのにぶちこまれては消えていくという、2chとwikiを半年ROMったChatGPTに生成させたみたいなツギハギ脚本。高度なギャグ。


壁とやってどうぞ、で終わるか、強烈なシンパシーを感じるかが読み手によって大きく変わる作風で、実際売れなかったっぽいことを作者が自虐的にこぼしています。自分は程度の差こそあれ作者(及びこのマンガが想定している読者層)と同じ穴の狢という自覚があるので、同族嫌悪と表裏一体でなんだかんだ全巻買うぐらいには好き。



あとこのマンガで紹介されてるチャーハンの作り方はガチのライフハックで、独身時代にめちゃくちゃお世話になりました。さすがに今は絶対太るので控えてるけど…。



引用箇所の考察



同上、P138より


主人公が脇道探検中にクラスメイト女子のピアノレッスンと遭遇し、弾いてみる?と言われて披露した曲。スーファミのマリオにはいろんなBGMがありますが、後述のとおり確実にこれを弾いています。


主人公がややゆっくりめのテンポで弾いたのち、次ページにてライバルであるもうひとりのクラスメイト男子が乱入し、

アスリーツ・ラグのテンポはこのくらいだろ!

同上、P139より


と言いつつ主人公より一回り速く同じ曲を弾く、という順番なんですが、聴いてもらえればわかる通り、これら一連の流れはリンクを貼ったトム・ブライヤー演奏動画のパロディになっています。


ラグタイムを得意とするトムを想起させるようにわざわざ作中で登場人物にラグタイムだと説明させたり、曲名をあえて動画内と同じアスリーツ・ラグで表記したりと、かなり露骨です。時系列もニコ動にアップされたのが2009年10月(YouTube初出はもうちょい前?)、この回が雑誌掲載されたのは2010年11月号と、時系列の辻褄も合いますし。


このマンガは1話完結で各回ごとにテーマを決め、その中でだらだらしゃべり続ける、というのが基本フォーマットで、引用がされた回は音楽にまつわる蘊蓄がいろいろ語られているんですが、自作スピーカーの電流帰還とかレコードのフォノアンプみたいに専門用語出しまくりで好き放題やってる他エピソードに比べると、この曲の下りだけ急に解像度がお茶の間レベルまで下がっているため(ネット民限定の細かすぎて伝わらないモノマネを見てるような感じ)、通しで読んでるとなんか凄い違和感があるんですよね。


単純にネタ切れだから実地へいかずとも簡単に手に入る動画から拝借した、というのが多分身も蓋もない真相な気がするんですが、作品やカバー裏のおまけマンガから推察するに、作者はアニメに市民権がなかった時代特有の趣味に対して恥や罪悪感を持ってるオールドタイプなオタクだと思われるので、小学生同士のやり取りとニコ動のノリを掛け合わせることで、アニメや動画でワイワイしている新世代への畏怖の念を表している、という無理やりなこじつけもできなくはないです。


ちなみに引用ページにおける主人公の演奏はBPM120、次ページでのライバルの演奏はBPM160だと明記されていますが、これは動画内におけるトムの演奏を計ったわけではなく、ゲーム中で使われている実際の音源の方(タイムにまだ余裕があるうちの通常状態でBPM160ぐらい)をわざわざ基準にしています。こんな風に雰囲気で楽しくやってるカジュアル勢に対して『や、正規はこっちだから』と冷や水をかけるような老害ムーブをかましてしまうところに、このマンガの魅力と限界の両方が集約されているような気がします。


⑬↑THE HIGH-LOWS↓ / 『二匹のマシンガン』


(公式のじゃないからそのうち消えるかも)


引用先の作品



集英社、森田まさのり
『べしゃり暮らし』
YJC第4巻より


作品解説


お笑いをテーマにした長期連載作品。実写ドラマ化もしてます。



超上手いけど写実的だからともすれば地味になりがちなところを、顔パーツと表情パターンを5個ぐらいに絞ってめちゃくちゃうるさくすることで、遠巻きに見てもこの作者だと無理やりわからせるストロングな絵柄(ブルーハーツとか175Rとかサンドウィッチマン書いた時はそこそこ実物へ寄せてたから、マンガでは作家性を出すためにわざとやってると思う)。



拳の前に顔で殺す不良イズムを体現したスタイルで、成り上がりの文化が残っているお笑いというジャンルとも相性が良いです。



ただ作劇は最終版のカタルシスに向けて小さい伏線や困難を延々と積み重ねていくスロースターターなので、週刊で流し読みしてるだけだと魅力がイマイチ伝わりにくいのが弱点。この作品は途中で少年誌から青年誌に移ってるんですが、そっちの方がマイペースにやれて作風と合ってるから、というのもありそうです。



引用箇所の考察


同上、P178より


物語序盤のキーパーソンである漫才コンビ、デジタルきんぎょ(デジきん)のラジオ内にて流れていた曲。この回はサブタイトルもまんま『二匹のマシンガン』で、この曲の歌詞とリンクさせる前提で作劇がされています。



この作者は『ろくでなしBLUES』の頃から対談したりメンバーまんまなキャラクターを登場させるくらいブルーハーツの大ファンで、同作中でも1話全部使って『英雄にあこがれて』の歌詞をフルで引用する回があったりしたので、事実上ブルハの続編バンドである、ハイロウズを使った今回もそれに連なる系譜の演出です。



あと作中のデジきんはおそらくダウンタウンが部分的なモデルになっていて、ハイロウズとダウンタウンは結構深い関連性があるので(『日曜日よりの使者』のモデル説があったり、『ロブスター』のジャケ絵を松本人志が描いていたり)、その辺の事情を知る人への遊び的な要素もあるかと思われます。



文脈の説明をすると、主人公はアドリブを得意とする天才型で、高校のラジオや文化祭ではホーム故のアドバンテージ込みでスベり知らずだったゆえに、調子にのってネタの台本を全く覚えず賞レース予選へ出たところ、アウェーの空気感を初めて味わった上でダダスベりし、最後にはふてくされて途中で舞台を降りてしまいます。


その後追い打ちでデジきんの二人が養成所時代から挫折知らずのエリートだということを聞かされ、主人公は自信を完全に喪失することになります。


が、一方のデジきん側はこの回よりも前のエピソードにて、コンビ間の確執を主人公のおかげで吹っ切ることができた、という借りがあるため、主人公が今回の挫折でお笑いを諦めてしまわないよう、漫才中にナメた態度をとってダダスベりした挙げ句、客に逆ギレして終了した幻の初舞台が収録されたDVDを主人公に見せ、成功者に見える自分達も実は一度コンビを解散して再結成した黒歴史持ち、という秘密を伝えて励まそうとします。


そうした流れを経たのちに、デジきんの過去回想がメインなこの回へ繋がるので、曲の引用意図はデジきん側から主人公へのメッセージを要約して分かりやすくするため、と考えるのが妥当です。



曲の歌詞は作中において、


【序】

夜の宝石を化石に変えて笑ってる

『二匹のマシンガン』作詞作曲:甲本ヒロト


【破】

夢見心地のままでは夢はつかめない

同上


【急】

アダムの罪がリンゴなら僕らはレコード

同上


の順で引用されていくんですが、これはそのまま


【序】

世間の評価から無縁の、自分達が楽しければ万事快調な開始直後


【破】

理想と現実のギャップを知って挫折


【急】

自分の人生と芸が切っても切れないものだと気付き、生涯賭けて道を探求するための覚悟が出来た状態(=プロの世界)


という、デジきんのこれまで歩んできた芸歴と対応するようになっています。



で、歌詞の引用は最後に


悪魔は叫ばない ささやいているだけ
ただそっと一人ずつ 一匹ずつにただそっと

同上


で終わっていて、ここが上記の芸歴を踏まえた主人公に伝えたいメッセージの要旨かと思われます。


歌詞の中でいう『悪魔』はカタギに背を向け自分達の才覚だけで食べていく芸の世界を暗喩していて、現在主人公も陥っている【破】の状態で終わる人が星の数ほどいるなか、ほんの小さなきっかけやチャンスでも逃さず自分に吸収できる真摯さと、自分の人生をノータイムでオールインできる覚悟を持って初めて、【急】へ進むためのスタートラインに立つことができるんですよね。

一度挫折して解散し、それでも自分達にはお笑いしかないと覚悟して出戻ったからこそ成功をおさめた彼らは、上記のことを実体験としてよく知っているため、かつての自分達と同じ境遇にいる主人公に対し、過去の失敗と現在の成功が地続きであることをきっかけとして提示することで、そこから何かを気づけるか、その上で止まらずにやり続ける覚悟があるかを篩に掛けているんだと思います。ちょっとスパルタなしくじり先生みたい。


ちなみにデジきんと同様、演奏してるハイロウズもヒロトとマーシーが出会ったことでブルハ始動→歌詞をウリにすることで人気が出る→宗教色が強くなり解散→カウンターとしてハイロウズ結成→歌詞の意味を少なめにして演奏のマニアックさで勝負→評判がイマイチ→ブルハっぽさも自分達の個性だと認めて解禁、というそれなりの紆余曲折を経ており、この曲の歌詞にもそういった経緯が如実に反映されています。二匹のマシンガンってまんまヒロトとマーシーのことだし。


自分はハイロウズ世代なんでついつい評価が甘くなりがち、というのもありますが、この曲が収録されてる『バームクーヘン』はブルハやクロマニヨンズ込みでもかなり上位にくる名盤だと思っているので、ヤンジャンで初めてこの回を読んだ時は結構嬉しかったのを覚えています。


⑭Prince & The Revolution / 『When Doves Cry』




引用先の作品



(株)マイクロマガジン社、木村リノ
『あじさいタウン』
マイクロマガジンコミックス第1巻より



作品解説


バンド系マンガに音楽が登場するのは当たり前なので対象から外してたんですが、最終回なのでボーナストラックとして特別に、自分が持ってる中で一番好きな作品を選出。


シアロアやカゲロウプロジェクトみたいに楽曲と書籍を同時展開する系の作品なんですが、『世界観』とか『楽曲』じゃなくて『バンド』の魅力を全力で表現してるのがマジで最高。メンバー4人が初顔合わせのあとスタジオへ入ってセッションする時の描写とか、音楽にそこまで詳しくない人でも多分読んでてワクワクすると思うし。


どことなく乾いた絵柄、ややナードだけど陰キャとも違う絶妙なオフビート具合、宇宙人という飛び道具こそあれ基本はポップで王道なストーリーなど、オルタナのいいところが120%発揮された作風で、それがそのまま楽曲の雰囲気とバッチリ合ってるのも素晴らしいです。


2巻が出ることなく未完のままネット連載に移行し、そちらも現在は単行本化せず公開終了、という不遇の作品ですが、自分みたいに今でも心から復活を待ちわびてるファンは決して少なくないはず。


引用箇所の考察


同上、P66より


リードギター担当の宇宙人、ヌーリプト・イポダミッソチ(ヌっさん)が地球に飛来してくるきっかけとなったエピソード。


宇宙規模での盗聴が趣味で空耳アワーとか聞いてたところに、偶然受信した今回の曲のイントロギターが衝撃的すぎて地球へ墜ちてきた、という流れ。


When Doves Cryにはビートに抱かれてという邦題がついているので、ひと耳ぼれを強調するためにこの曲にした、というのもありそうですが、音源での再現がギリ可能な音楽性を持つアーティストのうち、宇宙人の興味を惹かせて地球に墜とす、というぶっ飛びシチュエーションに説得力を出せるのが殿下ぐらいだった、というのが実際のところな気がします。


このマンガはA Day In The Lifeの引用で幕を開けたり、ベーシストの実々子がリッケンバッカーを愛用していたり等、作中にそれとなくビートルズを意識している箇所があるんですが、ちょっとビートルズだと宇宙人にコミットするにはお行儀がよすぎるというか、もっというと変態性が不足してると思うんですよね(ジョンのRevolution 9とかジョージのインド音楽とかはかなり惜しいけど)。


プリンス以外で宇宙にも届きそうな変態性を持つアーティストだと、SF 愛好家だったジミヘンや、「自由になりたいならパンツを脱げ」という迷言を残したフランク・ザッパあたりが思い浮かびます。が、前者は演奏技術が高くて再現困難、後者はロックバンドに収めるには音楽性が少々雑多すぎるという問題があるため、ポップス畑を主戦場としつつアレンジやコンポーズの面で変態性を発揮している殿下の方が、宇宙人にバンドを組ませる動機づけとしてはしっくり来る気がします。


そんなプリンスに影響を受けたヌっさんのギターやインストプレイは、今でもニコ動に残っているこのバンド名義の音源で存分に聴くことができます。百聞は一見に如かずということで、エンディング代わりに一番好きな曲のリンクを貼っておきます。PVも素敵。







自分が始めた物語なので、『未完ダメゼッタイ』という信念のもと、誰が見てるでもないシリーズを3か月近くに渡って書き続けてきました。



実はこれまで紹介した以外に岡崎京子とか西島大介とか浅野いにおとかも本棚にあるんですが、そういう引用ありきで物語が成立してる系とか、語られることを前提に引用してるエヴァ的商法系はサブカル方面で既に散々擦られてるため、一個人で今さらやるのは荷が重いと考え、今回はスルーしました。


マンガと音楽の二重テーマは裏取りが大変なのでもうやりたくないですが(元々誰も頼んでない)、ズボラなお尻に火をつけてモチベーションが保てる、という意味では連載形式も結構悪くなかったので、適当なテーマが見つかったらまたなんか書くかもしれません。



お読みいただきありがとうございました。




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