GAME OF THRONESの原作を読んでみた その2

こんにちは。
前回の投稿から気が付けば二か月以上も空いていて驚きました。
それだけGAME OF THRONESの原作を一冊読むのに時間が掛かるということですが…。

ということで、今回は"A SONG OF ICE AND FIRE"シリーズの第二作目、"A CRASH OF KINGS"を読みました。

ストーリーとしてはドラマ版のシーズン2と同じ辺り。スタニスやメリサンドル、ダヴォスが登場し、正当な玉座の継承者を巡ってスタニスとレンリーとジョフリー(というよりサーセイ)が対立し、依然としてスタークとラニスターの戦争も続いているような状態。正にそれぞれの王たちの戦いが描かれている。

ドラマのシーズン2のブラック・ウォーターの戦いのシーンは、ドラマ全体を通してもかなりお気に入りなのだけれど、この辺りの細かいストーリーを忘れてしまっていたみたいで、A CRASH OF KINGSを読みながら「あれ、こんな風だったっけ?」と思う箇所もしばしば。

例えばレンリーはスタニスの見た目をした黒い影に殺されるけれど、ドラマを見ていた時は、その影がメリサンドルが洞窟で産んだものだと思っていた。=スタニスが望んでレンリーを殺害したとばかり思っていた。

だけど本を読む限り、影がレンリーを殺したことについてはスタニスの意図は絡んでいなさそう。弟の死後、スタニスはレンリーについての悪夢をよく見ていて、自分が殺したような感覚があるようだったけれど、実際にメリサンドルと共謀してはいないようだった。そうなるとあれはメリサンドルが勝手にやったこと? それとも本当にロード・オブ・ライトの思し召しなのだろうか?

未だにメリサンドルがいまいちにどれくらいの力を持っていたのか理解できていない。最初に登場したときはインチキ聖職者だと思っていたけれど(とくにドラマ版では積極的にスタニスに迫るシーンもあったし)、彼女は実際にメイスター・クレッセンが盛った毒の影響を受けなかったし、後半のシーズンでは死んだはずのジョンを生き返らせ、最後のナイト・キングとの戦いでは柵や剣に炎を灯している。美しい彼女の本当の姿は恐らく人間の寿命さえも越えた老婆だと言うことも考えると、やはり聖職者、預言者というよりはある程度、本当に魔術を使える黒魔術師ということになるのだろうか。

完全にA CRASH OF KINGSの話から逸れてしまうのだけど、ドラマ版でのメリサンドルの最期がとても好き。スタニスを誑かしたり狂信的だったり、挙句の果てにはシーリーンにあんなに惨いことをした彼女のことがドラマのなかでも一、二を争うくらいに嫌いだった。だけどジョンの蘇生やナイト・キングとの戦いの中で初めて自身の力を正しく活かす方法を知ったのではないだろうか。それから自信を無くしてしまったアリアに対しての助言というか、彼女こそがナイト・キングを倒す運命だと諭すようなことば。

そして戦いが終わり、生き残った人間たちが勝利を喜ぶなかで、一人でひっそりとその人生に幕を下ろすその後ろ姿。彼女の白い首に飾られていた大きな赤い宝石の首飾りを取り去り、若さと美しさを失い、骨となって大地に頽れるさまをいつの間にか涙を堪えながら見ている自分がいて驚いた。あれだけ嫌っていたはずなのに、知らぬ間に許してもいた。彼女の死に様はシリーズを通してもかなり印象的なものだった。

それからシオン。ロブの使いで父親の協力を仰ぎに行ったはずなのにどうしてあんなにもあっさり裏切ったのだろうとずっと思っていた。
ネッドの捕虜ではあったけれど、スターク家の子ども同然に教育を受けて育てられていたはずなのに、と。

だけどやっぱりこのゲーム・オブ・スローンズの世界では、命より権力や名誉が大切であるという価値観もあるし、自分の帰還を父親に喜ばれなかったことや後継者として認められなかったこと、しかも”女性”である姉にその座を奪われたことがどうしても受け入れられなかったのだろう。

全然重さは違うのだけれど、私はずっと派遣社員として働いていて、仕事の内容は正社員と同じだし、ときには正社員より残業をしたり私しか分からない仕事もある。だけど派遣社員というだけでいろんな場面で線を引かれることがある。なんだかもしかしてシオンもこういう気持ちだったのかもしれないな、と思うことがあった。

スターク家のなかで大切に育てられても、どうしても拭いきれない疎外感のようなものがあって、アイロン・アイランドへ戻れば本当の居場所が見つかるとずっと夢見て育ってきたのだろう。

だけどその頼みの綱というか、希望が打ち砕かれてしまったから、必死で繋ぎとめるためにあんなに無謀かつ卑劣なことをしでかしてしまったのではないだろうか。

ドラマでも小説でも彼がスターク家やウィンターフェルにしたことは到底許しがたいけど、その後下された罰を含めて彼の人生を思うと不憫に思えてくる。

それからドラマを見ていたときからそうなのだけれど、キャトリン視点のシーンは辛い。最愛の夫を亡くし、二人の娘は敵の捕虜となり(しかも内一人は安否不明)、ロブは戦争の指揮を執りブランは半身不随になり幼いリコンのそばにいてあげることもできない。

彼女がラニスターと和平を結び、戦争を終わらせたいと願う気持ちが理解できる。夫を亡くした上に、子どもたちまで失いたくないという母親としての気持ち。だけどそれを家臣たちは、"woman's fear"だとかと言う。

ネッドの仇を討ちたい気持ちや、スターク家の名誉を回復しなければいけないという思いだって理解できるけれど、でもロブを始めとした子どもたちが死んでしまったら意味が無いし、得るものより失うものの方が多くなる。

ブランとリコンまで殺されて(実際には二人は無事だけれど、結局キャトリンはそのことを知らないまま一生を終えることになる)、唯一生き残った息子のロブを護りたいのに、親の心子知らずというか、ロブは名誉のために戦いに行ってしまう。

GOTの世界では女性は戦場に立たないけれど、キャトリンは必死に戦っていたし、サーセイもデナーリスもサンサもアリアもマージェリーもそう。それぞれがそれぞれの方法で、男性陣に負けず劣らず戦っている。それがとてもドラマチックで魅力的で、GOTの女性陣を愛さずにはいられない所以だ。

ドラマ版でお気に入りだった、ブラック・ウォーターの戦い中にサーセイがトメンとともに玉座で心中をしようとしたシーンが原作には無かったのがかなりの驚きだった。私はあのシーンでサーセイを好きになったから。

とりあえず今は劉慈欣の『三体』の二巻を読んでいるのと、森博嗣の『幽霊を創出したのは誰か?』がそのあとに控えているので、"A STORM OF SWORDS"を読むはそれらのあとになるかな。

本を読むスピードがめっきり遅くなり、歳を感じつつあるこの頃です。

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