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魔法にかかったかっぱちゃん

かっぱちゃんとは、私の母のことだ。

母は19歳で家をでてから、77歳までずっとアルコールと共に人生を歩んできた。飲まない日、そんな日はなかったと思う。

母がアルコールを飲むと、私はいつも悲しみ不安、恐怖、心配とともに、苛立った。

父との壮絶なけんか、暴言、愚痴、嗚咽が夜通し繰り返された。それが週の半分かそれ以上。

私が自立したあとは、電話で同じことが繰り返された。

そして、ふと最近思った。母は魔法にかかっていたんだ。とけてはかかるの繰り返し。

完全に別人と化したその姿は、魔法にかかっていたと思えば、納得できるような気がした。

母にも人生の苦しみ、淋しさ、満たされない感覚。色々あったのだろうと思う。

そして、77歳になった母は、脳梗塞で救急搬送された。急性期病院からリハビリ病院を経て、介護老人保健施設でお世話になって2年半が経とうとしている。

およそ60年ぶりにアルコールと決別している。

母は高次機能障害と左半身の麻痺がある。記憶と妄想が入り混じるときがある。

10月と11月に行った面会では、娘のわたしのことを、最初から最後まで実の妹と思って話していた。

私だよ。そのひと言は言えなかった。最後まで母の6人兄弟の思い出話を一緒に笑いながら語った。

また、魔法にかかっちゃったな。

娘をわからなくなってしまった淋しさは確かにあるけど、こんな真顔で実の妹を演じている自分に笑えてきたのも事実。

人は誰でもいつも同じじゃないし、色んな母だけど、命を救ってもらい、また会って話すことができてる。そんな奇跡に感謝です。



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