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【映画メモ】クライシス【#8】

ゲイリーオールドマンが好きで見ました。昔のようなイかれた役が少なくなってきて寂しい限りです。今回も正義感溢れる大学教授の役でした。

解説は映画.comさんより

アメリカで社会問題となっている、依存性の高い処方箋鎮痛剤オピオイドのまん延による危機を描いたサスペンススリラー。合成鎮痛剤オピオイド「フェンタニル」の密輸を追う捜査官ジェイク、行方不明になり亡くなった息子の死の真相を探る建築家クレア、非依存性の鎮痛薬販売を計画する製薬会社と政府の癒着を知った大学教授ブラウアー。立場の異なる3人は、それぞれ必死の覚悟でオピオイドの実態に迫っていく。大学教授ブラウアーを「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」のゲイリー・オールドマン、捜査官ジェイクを「君の名前で僕を呼んで」のアーミー・ハマー、建築家クレアを「アントマン」シリーズのエバンジェリン・リリーが演じた。監督・脚本は「キング・オブ・マンハッタン 危険な賭け」のニコラス・ジャレッキー。

https://eiga.com/movie/95054/

立場の異なる3人の物語が進んで、そのうち2つは交わっていきます。3つのうちの一つがゲイリー・オールドマン扮する大学教授の話でした。彼は、依存症を引き起こしにくいという新薬のマウス試験を受託していました。その際に比較対象として、もうすぐ承認される新薬を使っていました。すると、1週間では問題ない結果だったのに、少し長く観察をしていると対照薬を投与したマウスも死に始めます。生き残ったマウスも全てが依存症の症状を示していました。再試験をしましたが同じ結果が出てきました。その新薬は、人での臨床試験で最終段階に入っているにも関わらず。

大手製薬会社が隠蔽するための工作を始め、大学も多額の寄付金を守るために隠蔽に傾きます。FDAに告発しますが、協力してくれていた国の担当者も突如異動になり、教授の出したデータは消し去られました。ロビー活動怖い。さらに、教授の過去をほじくり返し、パーマネント契約を破棄させ大学から追い出します。

リアルに薬の研究者として裏を見ている身としては考えさせられました。副作用の調査にも3年ほど関わっていました。実際、表に出てこない副作用なんて山のようにあります。でも、それは隠蔽のようでもあり、隠蔽ではないようでもあり、極めてグレーなのです。薬の危機管理は「危なそうだから対応しておく」ではなく、「明確に因果関係が認められたら対応する」というスタンスです。そうすると、薬やワクチンを投与して副反応が出るまで、重篤な例では死ぬまでの間にも、食事もすればジュースも飲むし、病院から歩いて帰るし、お風呂も入るし、実生活では因果関係が特定できないんです。何もしていなくても突然死する人も一定数います。そういう数字に隠されてしまいます。そんなとき「因果関係は不明」として処理されます。ほとんどが不明に分類されます。否定はできないけど、因果関係も明確ではない。

もちろん薬ですのでリスクとベネフィットの比率もあります。一件の事故のために何万人もの利益を失わせて良いのか。でも、実際に死んだ人の家族は、他の人では代わることのできない1人なんです。1万分の1という数字では済まされません。そういう複雑な気持ちで見ていました。

この映画の唯一の救いは、大学を追われたゲイリー・オールドマンは新聞に大学の隠蔽を告発します。製薬企業はダメージもなく逃げおおせますが、隠蔽を指示した学長は大学を追われ、ゲイリー・オールドマンは別の大学でポストを得ることができました。

ただ、ここで忘れてはいけないのは、マウスが死亡したデータが認められた訳ではありません。なので製薬企業はお咎めなしです。最終段階まで進んだ新薬は承認されて市場に出てきます。学長は不都合なデータを隠蔽しようとした倫理的側面で解任されただけなのです。

普段、鎮痛剤をほとんど服用しないのでユーザー目線ではなく、もちろん医療者でもなく、研究者目線で見ることができ、考えさせられたいい映画でした。ま、僕もそんなデータが出て隠蔽が指示されたら告発するだろうな。というか、実はもう怪しいデータを持ってたりして。



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