見出し画像

【読書メモ】関節王(三倉佳境)【#42】

格闘技好きとしては、いろいろな格闘技漫画も楽しく読ませていただいています。古い漫画について、忘れないうちに書いておきたいと思います。

まずは『関節王』です。グランドチャンピオンで1992年から1994年にかけて連載されていた漫画です。

主人公は水澤 完(みずさわ かん)38歳です。全日本柔道選手権大会のとある地区予選で、無名の水澤が勝ち進み優勝します。水澤は優勝後のインタビューで、自分は古流柔術「守天流」の継承者で、今回の大会出場は「守天流」の強さを世に知らしめるためだと語ります。そこから物語が始まります。

柔道にとどまらず、総合格闘技にも参加し、ムエタイとも戦い、守天流の強さを知らしめていきますが、その裏には誰も知らない理由が隠されています。

設定が秀逸です。守天流は、1400年前に仏教の伝来とともに日本に伝わった武術を元に、聖徳太子によって創始された武術です。成立後すぐに分裂してしまい、それぞれが四天王の神様の名前が冠されています。投げ技を中心とした持国楼、固め技を中心とした増長補、当て身を中心とした広目拳。

守天流に興味を持って、その秘密を暴くために水澤について調べていた女性雑誌記者・松浦 泉 (まつうら いずみ)が、四天王の残り一つ、多聞天の名を冠した流派がないことに気づきます。その流派こそが、守天流の闇の部分「多聞殺」でした。光が強いからこそ、深い闇ができる。その闇を葬り去ることが水澤の本当の目的だったのです。

というようなストーリーです。柔術に関しては、仏像の姿勢が技になっていたり、型の稽古を地道に繰り返すことが大切だと語っていたり、高度な技術ほど精密な身体操作が必要なんだと諭したり、かなりリアルな設定です。超能力なようなものは出て来ません。生徒を教えるシーンでも、基礎体力をつけることが大事だと指導するシーンがあったり、基本あってこその技だと教えていたり、ガチンコな感じです。創作されている技も、実戦でも十分に使えるんじゃないかと思える内容です。

そのような、ガチンコの内容なので、おそらく人気が出なかったのでしょう。最後の方は急激に駆け足になって、ほとんど打ち切りに近いような、突然の終わりを迎えています。

また、作者のコメントでも、主人公の水澤は38歳という設定ですが、最初はすらっとしたかっこいい人物を考えていたようです。しかし、実際には、ずんぐりむっくりの、ザ・中年という体型になってしまい、地味な感じは否めません。

もう少し人気が出て、長く続けばいろいろ面白いエピソードが出て来たんじゃないかと思えます。もちろん、今の5巻でも十分に面白い内容ですが、そう期待せずにはいられないくらいに、格闘技、武道武術好きにはたまらないマニアックな魅力満載です。

おわり


頂いたサポートは、とてもモチベーションになっています。新しい記事を作る資料費として、感謝しながら有意義に使わせていただきます。 気功・太極拳を中心とした健康と、読んだ本について書いています。どちらも楽しんでいただけると嬉しいです。 サポートしてくれたあなたに幸せが訪れますように!