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vol.217 個展作品 モデル:nemuiさん

緋色展の展示作品モデルさん7人目はnemuiさん。
今回の個展、単純にモデルさんを撮った作品を展示するのではなく社会問題をテーマにした作品を撮りたいという思いがありました。
というのも自分が大学時代にそういった社会問題を取り扱う(?)学科にいたので自然と社会問題をどう自分なりに切り取るのかという思考をもっていたため、それを形にしたかったのです。

その社会問題(問題と言っていいのか不明ですが便宜上、社会問題と言います)で興味があった一つがLGBTです。
いわゆる性的マイノリティの方々にフォーカスを当てた作品を撮りたいと漠然とした思いがありました。
ただ、内容が内容の為協力してくれるモデルさん選びから慎重に行わなければいけないという思いもあり、以前はSNSで「無性」という性を公表されていたnemuiさんにお声がけしたのは昨年のリアポの会場でした。

そこで実際にお会いし、自分がこういう作品を撮りたいとお伝えした際に協力しますと言ってくれたこと。自分が撮りたい作品を説明した時には作品の内容とnemuiさんの性が合わない事などお話しいただいたことが決め手になりました。

その後、内容を変更してnemuiさんの同意を経たうえで作品撮影をすることになりました。

本当にこのようなセンシティブなテーマの作品に協力してくれたnemuiさんには感謝しています。



「 独立不覊 」
Model:nemuiさん

この社会は常に目まぐるしく変化する。
技術の進歩、社会構造の変質、新たな価値観、一過性のブームの流行り廃りなどもまた社会変化であり、社会に住む人々は時にその変化を受容し、時にその変化を拒絶する。しかし一度社会の中で変化が生じたのなら人々がその変化を受容しようが拒絶しようが、その変化が起きる以前の社会構造に戻ることは決してない。
その変化に対する個々の対応は実に様々であり、その変化に抗う者、変化を受容する者、受容した振りをする者、右往左往する者、そして変化を明確に拒絶する者など様々である。

数年前より耳にするようになったLGBTという言葉はLGBTQIA+という言葉に変化し、広く社会的に性的少数者を指す言葉としてゆっくり確実に市民権を得るようになった。
こういった性に関するテーマはデリケートでセンシティブな内容であるが故に作品のテーマとしては嫌厭されるが、「写真を撮る」という大きなカテゴリの中にある小さなカテゴリであるポートレートで社会的なテーマを取り上げるということはとても挑戦的で有意義なものであり、いつか取り組んでみたいテーマのひとつでもあった。
 
今回、撮影に協力していただいたモデルのnemuiさん(旧名:アマグモさん)は男性でも女性でもない無性を公表されている。去年のREAL PORTRAIT NAGOYA’22の会場にて今回の個展のこと、LGBTについてどんな作品を撮りたいと考えているか、ということをお話しさせていただいた。その時のお話した自分の考えている作品とnemuiさんの性のあり方が一致しないことなどをきちんとmenuiさんご自身の言葉で伝えてくれたことで改めて性に関するテーマの難しさと自身の理解の無さを知り、作品を考えた末に性的マイノリティと言うテーマを根底にし、一人の人間として自分が自分らしく生きていくことを決めた作品にしようと考えた。
 
一人の人間が自分らしく生きると決めたその一瞬をどう表現しようかと悩んだ末に、どんんな性であれ生きていく上での様々な偏見、柵、他者の勝手な常識の押し付けなどから逃れられない様子を8色(白と黒は世間や常識を、残りの6色はレインボーフラッグより)のリボンを使い表現し、逃れるこのできない社会の檻の中で偏見、柵、他者から勝手に押し付けられた常識の中にあっても自分らしく生きていくと決めた一人の人間の決意をnemuiさんご本人が撮影当日に着たい服で撮影した。
社会構造の変質が先にあり、その変質を持って人の心理、行動が変化するのかその逆が真であるのかはわからない。けれどその激流のような変質の中にあって自分が自分として生きると言う独立不覊の気持ちを持ち続けることが求められているのではないだろうか。

こちらがnemuiさんと作り上げた作品のキャプションになります。

性的マイノリティの方々を問わず、男性であっても女性であっても世間の常識というしがらみから逃れることはできない。
でもそんな世の中にあって、自分らしく生きることはできる。自分はそう思います。

そんな思いを作品にするとしたらと考えた際に、写真作品で性的マイノリティという偏見や世間、常識といった見えないものに縛られていることをリボンを使って表現し、そこから自分が自由に生きるという決意をリボンを投げ捨てるという行動で表現しようと考えました。

ただ、たとえ自分が自由に生きると決めても世の中はそんな甘くはなく。
結局は柵(しがらみ)の中にいるということを作品を通して表現したかったのです。

では、また。

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