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vol.220 個展作品 モデル:Narumiさん

緋色展の展示作品モデルさん10人目はNarumiさん。

Narumiさんは昨年のリアポの会場で初めてお会いしたことについては以前記事を上げさせていただいてますのでそちらを読んでもらえればなと思います。

で、改めてNarumiさんとの撮影で利用したスタジオは名古屋市の今池にあるstudio bibiさんのBlack Roomを使いました。

スタジオ内

このスタジオで撮ったのがReal Portrait Nagoyaの個人枠の作品と今回の個展の作品で一回の撮影で二つの作品を撮り切りました。

この作品はもうすでに頭の中に完成したこのイメージがあったのであとは露出と構図だけでしたのでかなり早く撮り終えました。

上の作品はコンプレックスばかりだという彼女がそれを克服し、前を向く姿を撮りたいということで作り上げたのですが、今回の個展でReal Portrait Nagoyaに展示した作品とは逆にコンプレックスに延々と悩み続ける姿で対比したものにしようと考えました。

実は一枚だけ、上下逆さまだった・・・。

人の視線は左上からZを描くように移動するという理論があります。
いわゆる視線の誘導というものでZ型、F型、N型というものがあります。

この左右品では起点をどこに置くかということと中心の一番小さい作品を見えるか見えないかというギリギリの印刷まで追い込むというこの2点が要になるものでした。

この作品の起点は全ての視線誘導の3つの型には当てはまらない左下を起点として反時計回りになっていて最後に真っ黒に見える一枚で終わります。

なぜ最後の一枚が黒いのかは最後に書きます。

「 Complexに沈む 」
Model:Narumiさん

 今年のREAL PORTRAIT NAGOYA ‘23においてモデルのNarumiさんと多重露光を用いてNarumiさん自身がcomplexに感じていることでも他の人から見たらそこが魅力的に映る時があるという自分が感じていることと他者からの評価は必ずしも一致しないというコンセプトをもとに「Complexに咲く薔薇」と言うタイトルの作品を展示した。そしてこの作品はその前日譚である。

REAL PORTRAIT NAGOYA ‘22の会場でお会いするまでNarumiさんとは一度も話をしたことはなかった。何が話をするきっかけになったのか思い出すことはできないが、彼女自身に彼女がモデルとなった作品を解説してもらったことだけは覚えている。

その会話の中で一番印象的で記憶に残っているのはNarumiさんご本人が「自分にはcomplexしかない」という言葉だった。どんなところがcomplexなのかNarumiさんは話してくれたが自分にはNarumiさんの言うcomplexに対して自分は何がcomplexなのか分からず、何を持ってそう感じているのか分からなかった。
本人にとってはcomplexに感じていることでも他の人から見た場合、それはcomplexとは感じられないことは多く、また見る人が見れば本人が気になるところが魅力だったりする。それでもそんなことはお構いなしに自分を卑下し、価値がないと言う暗くてマイナス思考でcomplexばかりのNarumiさんだからこそあの作品を撮りたかった。

 REAL PORTRAIT NAGOYA ‘23の展示作品はこの自分自身のcomplexを受け入れ前を向くことが出来たNarumiさんだとすればここで展示している作品は自分のcomplexに悩み、自分自身で深みに沈み続ける昔のNarumiさんである。

 人に何を言われても自分なんかなんの価値もないと誰しもが持つ自分自身の魅力に気づかず、延々と深みに沈み続ける昔のNarumiさんの心理を人が無意識に辿る視線の動きを全く無視した展示で表現することにした。
一番魅せたい写真作品を一番小さく、何が写っているかわからないほど暗く黒い一枚にする。右下に一番大きな作品を用い、人が慣れた視線の動きである時計回りとは反対方向に作品のサイズを小さくしていくという導線を描くことによる無意識下の不快感、違和感を感じていただけたらと思う。

最後に自分がこれまで撮ってこなかった人の内面を表現したいという、初めての挑戦を初撮影という中で受けてくれたNarumiさんに感謝を。



こちらがメインの一番小さい写真のデータです。

このデータを光沢紙に印刷するとギリギリ見えるか見えないかという印刷に仕上がります。

メインの作品をギリギリ見えるか見えないかまで暗くした理由ですが、他人が抱えているコンプレックスというのは周りの人からはそう簡単に理解もされないし、他人がコンプレックスで苦しんでいることもしっかり相手を見なければ理解することもできないと思います。

その相手をよく見るということを実際に体験してもらうために考えたのがギリギリまで見えるか見えないかまで追い込むことでした。

ですので今回のメインになる作品に関しては来場者がこの作品の前で何が写っているんだろうとよく見るためにいろんな角度から頭を動かし、体ごと位置を変えるような行動を持って完成します。

それくらい他人のことを見ようとしないとその人が何に悩んでいるかわからないんだよという。

で、実際にこの作品の前でほとんどの人が頭を振り、体ごと見る位置を変え、何が写っているのか真剣に見ていただける方が多く、実際に足を止めていた時間は全作品の中でも一番長いと思います。

その姿を見て自分もNarumiさんも二人で顔を見て心の中で狙い通りだと思っていたことをここで独白しておきます。

では、また。

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