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組織のオブザーバビリティを上げる

ごきげんよう🙋‍♀️あっきー(@kuronekopunk)です。
この記事は Engineering Manager Advent Calendar 2023の9日目の記事です!

自分がEMという肩書をつけたのは2023/1からなのでちょうど1年くらいになります。この1年、EMとして開発組織を見たり、他社のマネージャーの方とお話させていただく中で組織のオブザーバビリティを上げることの大事さを感じたのでそれについて書きます。




オブザーバビリティとは

オブザーバビリティとは、『可観測性』や『観測する能力』などと訳されます。システム運用の観点では、取得したデータを元に、システムの状態を把握する能力やそれを実現する手法などのことを指します。
オブザーバビリティを上げることで、複雑なシステムの状況を適切に把握し運用をしやすくる狙いがあります。


組織は複雑なシステム

オブザーバビリティ向上が複雑なシステムの状況を適切に観測し、運用しやすくすることだとした場合、組織もある目的を達成するためのシステムだと捉えることができます。同じ作業をするだけではなく、状況によって複数の人間が有機的に関わり合い仕事が進みます。
組織を複雑なシステムだと捉えると、オブザーバビリティを設計し内部の状況を把握できる仕組みを作っていくことが、組織を運営する上では大切になると思います。


組織のオブザーバビリティを設計する

仕事の進捗管理も可観測性を上げる取り組みだと言えます。こういった仕事に必要な観点でオブザーバビリティを上げるためのログの取り方や頻度について考えていきましょう。

進捗状況のオブザーバビリティ

例えば、週次で進捗状況を確認するMTGをしていたとすると、システムとしては週次でログやメトリクスが取れている状態と言えます。
ログの取り方はどうでしょう。タスクの個数がカウントされていて何%進捗と表せられるものでしょうか。もしくは不確実性の高い仕事で作業者の気持ち何%くらい終わったという指標かもしれません。
またログの頻度について、週次だとアラートが上がったり、対策するのが最長6日間遅れることになります。
これを防ぐ意味もあるのがスクラムのデイリースクラムであると言えそうです。これにより日次ログが取れるようになりました。

また、日次でも遅い、もっと早くということだと、Slackの分報は日報の頻度を早めたメタファなので更に可観測性が上がりそうです。
※Slackの使い方については他でも記事を書いています。


モチベーションのオブザーバビリティ

書籍『ハイアウトプットマネジメント(HIGH OUTPUT MANAGEMENT)』では人が仕事をしない理由は「能力がない」か「意欲がない」からで、マネージャーがやることは「部下の教育訓練」と「モチベーションの向上」と書かれています。この観点で、まずはモチベーションの可観測性を上げる方法を考えてみましょう。

モチベーションの源泉は人によるので一概には言えませんがいくつか挙げてみます。

  • キャリア・自己実現

  • 組織との関わり

  • 体調

キャリア・自己実現
ほとんどの会社で目標設定がされていると思います。Will Can Must というフォーマットでWillを確認して会社の方向性と合うところを探していくものもあります。目標設定でWillを確認することは個人と会社の向かう先を揃えモチベーションに寄与するものだと言えます。
この目標設定、評価が基本的には四半期~半期で行われています。個人のキャリア目標やそれへの進捗は四半期~半期ごとのログで適切でしょうか?
目標(キャリアに向かって)に取り組めているか、その方向性がズレていないかの確認も必要になってきます。最低でも月次では確認したいなと思います。
例えば1on1を毎週している場合、月初の1回目は目標について話そうといった設計ができそうです。

目標設定にも近い話ですが、ミッショングレード制のある会社では個人のスキルを表に照らし合わせているのでスキルの可観測性を上げているという見方もできそうです。逆にグレード制でない場合はスキルをどの様に可視化していくかが課題になりそうです。

組織との関わり
チームメンバーや他部署との関わりもモチベーションに影響します。従業員サーベイには「最近他者から感謝されましたか?」「他部署の方は協力的ですか?」といった質問項目があるので従業員サーベイが担っているという味方ができそうです。
ですがサーベイだと組織単位の平均値になるので詳細は1on1や個別で観測できると対策までが可能そうです。月1は1on1でサーベイのようなテーマで話すことも意味がありそうです。
また、サーベイでは「経営方針に納得していますか?」というものもあます。例えば月次会や会社の方針が共有されたあとの1on1で「会社の方針の理解度は何%ですか?」など聞くことでこの観点のすり合わせができそうです。

体調
風邪をひいてダウンしたら元も子もありません。「なんか最近調子悪いな」といったレベルから感知できたらできる対策もありそうです。
直接的に「体調どうですか?」だけでなく「今の体調は何点ですか?」「身体動かしてますか?」など聞き方を変えることで小さな異変にも気づくことができます。ログやメトリクスの取り方を工夫することで得られる情報や見え方は変わってきます。
聞き方に関しては、書籍『問いかけの作法』が良書なのでオススメです。


オブザーバビリティ設計例

ここまで書いた内容をまとめるとこんな感じになります。
この内容で可観測性を高めるため都度のMTGや1on1などでの質問項目を決めていければと思います。

随時、日次、週次で確認したい。

  • 進捗状況や阻害要素の検知(分報、デイリースクラム)

  • 体調など(分報、デイリースクラム、1on1)

月次では以下のような内容を第n週はこのテーマと決められると良さそう。

  • キャリアへの取り組み

    • 「目標へ取り組めていますか?」「方向性変わっていませんか?」

  • サーベイのような内容

    • 「最近他者から感謝されましたか?」「誰かに助けられたなってことありましたか?」

  • 組織の方針理解

    • 「事業の方向性や組織文化に違和感はないですか?」「不明点や違和感はありますか?」

四半期、半期ではキャリアや自己実現の話をしっかりと深掘り目標設定等を行えるようにしたい。

組織が大きくなった場合の設計

ここまでは自分が直接見ているという体で書きましたが、マネージャーofマネージャーなど階層構造がある場合、上記の内容をマネージャーに任せ、その中でアラートになりそうなもののみを上げてもらったり、抽象化して共有してもらうなどの設計も必要になります。
ここのアラートのしきい値は感覚になりやすいのでマネージャー間で認識を揃えることが重要に思います。


個人ができるオブザーバビリティへの取り組み

ここまではオブザーバビリティを設計する側の話でした。ですがオブザーバビリティはログが適切に取れないと何も意味がありません。
言い換えると何か聞かれたメンバー各自が適切に状況を伝えられないと可観測性は上がりません。
前提、質問が悪いですが、「元気ですか?」と聞かれちょっと風邪っぽいけど「元気です」と答えるとどうしようもありません。この二人の関係性にも問題がある可能性もありますし、心理的安全性という話もアラートをすぐに上げられるという観点だと思います。

分報を活用しよう

進捗状況の項目でも書いたように、分報はオブザーバビリティを上げるとても良い手法です。脳内を垂れ流す勢いで「◯◯やります(作業開始ログ)」、「なんか詰まったな(処理が止まったアラート)」のようなことを投稿すると状況が可視化されますし、何か詰まった時に誰かに助けてもらいやすくもなります。

ログの変化がないときは注意しよう

分報などでも言えますが、例えば日報を書いていた場合、書いた内容が前日と変わっていないときは注意が必要です。アウトプットが何も出ていないのか、それとも変化しているが適切にログを出せていない可能性があります。「◯◯について考える」のような抽象的な書き方だけ場合、外から見ると可観測性が低く何もわからないことがあります。分報活用にも繋がりますが注意してログを出せるようにしましょう。

アラートを上げよう

人間は単一のログを出すシステムより有能で有機的に動けます。些細な違和感を伝えるだけでも意味があります。
また自分だけでなく他の事柄のアラートも出せます。例えば「◯◯さん、作業詰まっていそう・体調悪そう」といった自分の領域以外で見えているものを人に伝えることで可観測性は上がっていきます。


さいごに

『組織のオブザーバビリティ』という考え方は、EMゆるミートアップLayerX 小賀さんからお話を伺い考え始めました。まだ運用できているわけではないのですがこの観点でガイドラインを作り組織内でオブザーバビリティを高めより強い組織を作っていきたいと思います。

こういった話したい方いたらお気軽にX(旧ツイッター)でご連絡ください!

Engineering Manager Advent Calendar 2023 9日目の記事でした!


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