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眉村卓で日常の良さを知る

眉村卓の主人公はとても平凡だ。

物語も劇的なものが少なく、日常を題材にしたものが多い。

登場人物も理性的で倫理観も高い人が多い。

色々と平和的だ。

本当に読んでて嫌な感じが少ない。

すごい読みやすいのだ。

それだけ書くと、あんまり面白くない人のようだが、めちゃくちゃ面白い。

「なんでなんだろう?」とこの文章を書いていて思う。

おそらくだが、圧倒的なリアリティがあるからこそ物語のアイデアの面白さが際立つんだと思う。

眉村氏と同年代のSF作家で筒井康隆がいるが、彼の描く人は変わった人が多い。

残酷だったり、下品なシーンも多い。

だからこそ、刺激たっぷりで面白いのだが、結構体力がいる。

あと、突拍子もない設定や実験的な要素や書き方などが散りばめられているので、読むのが困難な時もある。

その点、眉村氏の作品は本当に読みやすい。

本当にスラスラ読める。

そして、いつの間にか引き込まれて、アイデアの虜になる。

本当によくできている。


また、彼はショートショートの名手でもある。

その筋では星新一氏が有名ではあるが、眉村氏の方が僕は好きだ。

やはり圧倒的リアリティを感じるからだ。

そこにほんの少しのアイデアをたらすだけで、もんのすごく面白くなる。

それはほんとすごいことだ。

絶妙なバランス感覚だと思う。

作家というある種、浮世離れした職業でありながら、そういう生活感覚を持っているのはかなりレアだ。

そこに僕は惹かれたんだろうなぁ。

特殊な人種の中の凡庸さというか…逆にそれが特殊なんだよねぇ。

ただ、そこら辺がアダになったのか筒井康隆ほどは有名にはならなかった。

やっぱ刺激が強い方が目立ちやすいし、印象に残りやすい。

それは仕方ないことだが、ちょっと寂しいね。


そういえば、彼はジュブナイルという小中学生向けのジャンルの本も結構書いていた。

小中学生向きだとヒーローものになりがちだが、そこでも日常の延長のお話をたくさん描いている。

登場人物こそ小中学生だが、書いてることは大人向けとほとんど変わらない。

本当に書きたいものを書いてるんだろうなぁと思う。

そこら辺も子供だからといって、侮っていない感じに好感が持てる。


刺激が強いのは楽しいのだが、毎日は結構きつい。

軽い刺激があるからこそ際立つのだ。

フルコースはたまに食べるからいい。

味噌汁とご飯と漬物という日常が僕には必要なのだ。

彼の世界は「世にも奇妙な物語」に通じるものがある。

地に足がついた、すぐに戻ってこれる安心感を感じる。

というわけで、そういう圧倒的な日常の延長のお話を描く眉村卓が好きだ。


「世にも奇妙な物語」が好きだったり、日常に少しスパイスが欲しい人は、ぜひ読んでみておくんなまし〜。

ではでは〜来世で会いましょう。

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