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僕は泣きながら、教授におしぼりを何枚も何枚も投げつけたことがある【実話】

僕は、大学に9年間通った。
留年とかではない。
学部生として4年間、修士課程で2年間、博士課程が3年間で計9年間だ。

修士課程と博士課程の間は、大学院生を略して院生と呼ばれ、各自のテーマを研究しながらも研究室の後輩へ実験方法を伝授したり、相談事に乗ったり、夜な夜なボーリングに行ったりするマルチな活躍が期待されていた。

僕は院生時代には、上記の期待に応え、自分の研究を進めつつ、それ以外に嬉々としてやっていたことが一つある。
それは、色々な研究室を横断した飲み会を開くことだ。

研究室横断飲み会を開催した最大の理由は、みんなで飲みながら、研究の話をしたり、どーでもいい話をするのが大好きだったからだ。

研究室横断飲み会を開く際の大切なポイントがあって、色々な研究室の教授や講師といった先生方もお誘いし、多く会費を出して貰って、なるべく学部生・院生は負担が少なくて済むようにすることだった。

5研究室横断飲み会だと、10人の先生方がバックに付くので、非常に心強かったのを今でも鮮明に覚えている。
その節は幾度とない金品の要求にお答え頂きまして、
本当にありがとうございました!

ことあるごとに開催していたこの研究室横断飲み会の主な開催のきっかけは、花見、暑気払い、秋刀魚(BBQ)、忘年会、学内研究発表会打上げ、修了式だ。みんなで飲みたいって思いだけがあって、あと飲むきっかけさえあれば、正直何でもよかったんだとは思う。

今振り返ると、2か月に一度は開催していたようだ。。。
学位も取ったのだから、ちゃんと研究はしていた(と思う)。

秋刀魚(BBQ)だけは、バーベキューコンロ2台で秋刀魚を焼きまくって、ビールと一緒に食べるという会で、居酒屋で開催しない唯一の研究室横断飲み会だった。秋刀魚以外は、近くの居酒屋の座敷を貸切るのが定番だった。


そんな研究室横断飲み会での忘れられない出来事を紹介したい。
修了式の時の話、場所は大学の近くの定番の居酒屋だ。

学部生の卒業式と院生の修了式は同時に執り行われる。
学部生は例に習って、卒業式の後にホテルでの謝恩会を開くが、院生にはそれがない。そこで在校生の私としては、旅立つ院生(先輩も含む)を集めて打上げをするのは本当に自然な流れだったし、飲み会が出来て最高だった。

今回もみんなと楽しく飲める!

「生ビール30とウーロン茶3と青りんごサワー2!」
という注文から始まり、しばらくしてみんなに飲み物が届く。

「みなさん、色々お疲れ様でした。修論発表も終わり、本日の修了式も終わり、後は思いっきり飲むだけです!かんば~い!!」
と、3月中旬に院生だけの飲み会が始まる。

修了者は普段とはかなり違いスーツ姿で、今日の飲み会が特別なのがそこからも分かるいつもとは異なる雰囲気の飲み会だ。

院生同士は大体顔見知りなので、なんの緊張感もない気楽な連中ばかり。
でも、これで当分こいつらと飲めないなぁとちょっぴり寂しくなったりするのだけれど、ビールが来るたびに訳もなくみんなで乾杯して、5回も乾杯すればそんな寂しさなんてどこかへ吹き飛んでしまう。

アルコールは偉大だ。

そうこうしていると、学部生主催の謝恩会を終えた先生方が院生サイドの飲み会に集結し始めるのが毎年の習わしで、先生サイドが合流するころには院生サイドのほぼ全員が出来上がっている。

無論、先生サイドだって謝恩会で出来上がっているので、楽しく酔っ払った同士が集まり、酔っ払いの会が「かんぱ~い!」の合図で再度始まる。

そんな楽しい雰囲気に水を差す奴ってのはいるのだ。
他の研究室の教授Xだ!

「大学の経営という観点から大学を見るとね、学部の収支は黒字なんだけど、大学院は赤字なんだよね。だから院生は大学全体からしたら、お荷物なだよね」
と教授Xがどや顔で言い始めた。

騒がしい居酒屋の貸し切り座敷の一角にいた教授Xの教え子2人、僕、学部長の4人だけが瞬間的に凍り付いた。

この会の企画・主催の僕はカチンときた。アルコールの後押しもあり、座卓を挟んで正面にいた教授Xに詰め寄った。

「院生の修了打上げの今、なんでそんなこと言うんですか!?」

すると、

「だってね、それが事実だから。」

「事実だとして、この場でそれを言うのが相応しいと思ってんのか~!」
この辺からほぼ叫んでた。

「お前みたいに、この場の雰囲気も意味も考えずに、事実だからっていう科学者にあるまじき訳の分からない理由しか答えられないのが教授なんだら飽きれるよ。お前の教え子の晴れの日なのに。。」

「事実を言って何が悪い!」
と逆切れしてきた教授X

「お前はアホか!そんなことも分からないアホなのか!この場にお前がいると悪影響しかないから、この場から消えてくれ?この雰囲気わかるだろ?それが事実だからさ、今すぐ帰れよ!」

と、近くにあった綺麗なおしぼりとか、しょうゆのシミあるおしぼりとか、まわりにあったおしぼりを教授Xに向かって泣きながら投げつけた。

教授Xは何かこっちに言ってたけど、何んも聞こえなかった。
やつは、教え子に1万円を渡して帰った。
のは覚えている。

もっと置いて行って欲しかった5万とか10万とか。

僕は教授Xの教え子には悪い事をしてしまったと、すぐに平謝りした。
これだけは未だに後悔の種で、後輩たちには悪いことをした。。。

そんな折に突然、隣にいた学部長が大声で注文してくれた。
「生ビール4つ!キンキンのジョッキで!」

真冬だけど、キンキンに凍っている中ジョッキでビールがやってきた。

そしてアラブの王様のコスプレにレイバンのサングラスの学部長が音頭をとってくれた。

「まあ、お前の言ったことは間違ってない。あれを言って分かる人かどうかは別としても、言わなきゃいけないときは言わないといけない。それが出来たお前はえらい。そして、院生は研究室の宝だし、お荷物ではないことは断言しておく。これから社会に出ると、理不尽なことも多くあると思うけど、正解の反応なってものは無いから、自分の中に芯を持てるようになって欲しい。そうすればブレなくてすむ。本当に終了おめでとう!俺はみんなを応援している!さあ、飲みなおそう! かんぱ~い!!!」

一口目は、初めてビールを飲んだ時みたいにとてもとても苦かった。

けど、不思議と二口目は美味しかったのは覚えている。
もう15年以上前の出来事だけど。

あんなにブチ切れて良かったのかよく分からないけど、学部長に言わなきゃいけないときはあるという言葉はいまも忘れないようにしている。

みんなとまた飲みたいな。


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