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【エッセイ】 柴刈り

 昔話の中、おじいさんは柴刈りへ行くものであるが、これが火のある生活、ひいては里山の生活に欠かせぬものだと、この頃、にわかに思うもの。

 火を起こしたこともない人は、薪さえあればと言うのだろうが、暖を取るためのそれはあっても、最も必要なものは柴、すなわち木の枝や低木である。

 初めから太い薪に火は付かぬ、細い枝を燃やしていって、そうして火を育てれば、ようやく薪も燃えるというもの、それも火の勢いを調整するなら、いまの人が思い浮かべるような薪よりも、細いものが使い良い。

 もっとも、ガスのあるいまは、山へ入る人もなくなって、柴刈りもしなければ、里山には低木の生い茂り、木は下枝の伸び放題、荒れた山となりぬれば、動物たちが入り込み、人と自然の境界線、曖昧模糊になりながら、かつて築いた生活は、遠い昔と成り果てぬ。

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