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3行日記(待宵草、金網、八百屋)

七月八日(土)、曇時々小雨がぱらつく

朝、花が閉じていた。咲いているときは黄色い花だったのに、閉じると紅く染まっていた。昨夜、摘んできたのは、小待宵草だと思われる。図鑑を引くと、夜に咲いて朝にはしぼむので、宵を待つ草とある。

一乗寺から出町柳への散歩道。元田中あたりがおもしろい。金網の呪縛か、はたまた供養か。誰かが落とし物を括りつけて楽しんでいるのか。頂点に赤鬼、右に緑色のビー玉、左に忍者、下に干からびた芋、黄色いぬいぐるみ、その腹にしがみつく蝉の抜け殻、紫のトイカメラ、海老フライのぬいぐるみ、その衣に酢橘と蝉の抜け殻、お風呂にうかべるアヒル、誰かの鍵がついたキーホルダー、最下層にネクタイピン、ピンにしがみつく蝉の抜け殻。

帰り途、商店街にあるおばちゃんの八百屋による。どれにしましょ、おにいちゃん。黄色い柑橘系の果物を見ていると、中こんなんでんねん。皮がぶあつうてな。じゃがいもを見ていると、これじゃがいも、おっきいやろ、塩ふってチンするだけでおいしかったよ。

たいそうなものを仕上げたいと、あまり色気を出さずに、しぜんに水が流れるのを待とう。こぼさないように全部受け止めたいと欲もでるが、日々こつこつと、流れてくるものを拾い集めよう。ノイズもごちゃまぜにして、降ってくる声に耳をすまそう。

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