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3行日記(ふくらし粉、石壁の穴、茶色い三角形)

十月二十五日(水)、晴れ。

今朝も、妻が起きると、カーテンから漏れた光が壁に当たり、ビックリマークをつくっていたという。寝る前に両側のカーテンを閉じたときに、ちょうどそのような光のかたちになるようになるらしい。妻が言った。明日からも……ビックリマークになるような締め方を。

朝、妻が昨晩しこんだパンが失敗した。ふくらし粉をいれるのを忘れたらしい。机にはパン焼き機から取り出された、ぺちゃんこの何かが置いてあった。妻は転んでもただでは起き上がらない。それをどうにか使うすべを探そうともがいたあげく、冷凍しておいたミートソースを使って、ピザをこしらえた。新しい食文化の生まれる瞬間は、こんな感じなのだろう。

夜、茄子の煮浸し、茹で鶏、梨、シャインマスカット。チャックの散歩、いつもの道を歩いていたが、京阪の線路の前を左に折れて南へ、まっすぐ行って先週末に米寿祝いをしたレストランの角を左へ。その路地の左の石壁の向こうに、気性の荒そうな番犬を庭に飼っている家があるのだが、チャックはいつもそこを通ると、石壁にある穴を覗こうとする。すると、穴の向こうから、番犬が穴に鼻を突っこみ、唸りながら牙を剥く。チャックは内心びびっていると思うのだが、壁があるからか、気が大きくなり、なんじゃい!と言わんばかりに壁を回って、玄関のほうへ勢いよく駆け込もうとする仕草をする。ガード下をくぐって北へ戻る。スーパーの角を曲がると、妻が悲鳴を上げた。チャックが何かを口にいれたらしい。茶色の三角形のものだったという。いなり寿司、三角チョコパイ、おでんの厚揚げ……。チャックを戻してから帰りがけに捜索すると、カレーパンの袋が落ちていた。拾い食いをしたので、罰としておやつはなし。

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