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俺とスタンディングコースター@鷲羽山ハイランド

浮く!捻る!回る!

初乗車:2023年4月29日
好きなセクション:全部 家に欲しい

 元が四国だったからか、鷲羽山ハイランドへ行く機会がかなりあった。初めて訪れたのは2009年。その時は同級生のオオサキ君とウルトラツイスターを目当てに来たので、今回レビューするスタンディングコースターはアウトオブ眼中だったことを覚えている。というか、メンテナンスで動いていなかったと思う。

 タンディングコースターが面白いらしい、という話を聞いたのはその後。同じ塾に通っていた他校の友達が絶賛していた(※1)。おうおうおうそんな言うんだったら俺も乗ってくるわ!と親父と一緒に2回目の来園。が、その日も乗り場には鎖が引っかかっており乗車出来ずに終わってしまった。

 局、四国在住時代には1回も乗ることが出来なかった。よみうりランドで兄弟機種のMOMOnGAには乗ることが出来たが、なんだか心はスッキリしない。そんな心のモヤモヤにケリを付けるべく、今年のGWに10年ぶり通算6度目の鷲羽山ハイランドへ向かったのだった。

あの頃の鷲羽山 2010年くらい

 ち乗りという変則的車両だからか、雨風に弱い。本当に弱い。半年に1度のペースで遊びに来て、全部運休を引いた俺が言うんだから間違いない(※2)。6度目の正直でリベンジしにきたこの日も死ぬほど天気が悪かった。予報では午後から雨模様。バカかよ。

泣いちゃった

 タンディングコースターは、同じレールを共有するバックナンジャーとの交互運行になる。ここ数年は2時間ごとに車両入れ替えを行っており、午前バック、午後スタンディングというスケジュールで走っているようだった。ダメ元で、午後から立ち乗りが動かせるか係員のおっちゃんに聞いたところ、即答で無理と言われてしまった。俺のGW in 2023が終わった。

バックナンジャーくん

 こまでくると一生スタンディングに乗ることは無いんだろうな、と思いながらアホ面でお昼のビンゴ大会を眺める。ブラジル人の姉ちゃんが観客を盛り上げるのと反比例して、なんだか俺の心は冷めていた。ビンゴにも無事外れ、気分転換にターボドロップでも乗るかとあのクソ長い階段を上ろうと思った矢先、衝撃的な光景が目に入った。本降りの雨の中試運転をしているではないか!!!

狂喜乱舞の瞬間

 ぶのはまだ早いと思いつつも、すげえニヤニヤしながら乗り場に向かうと紫色の車両が客待ちをしていた。結局運行すんのかよ。

ザ・本降りの雨
うおおおおお!!!

 のスタンディングコースターは、1986年に国際科学技術博覧会(つくば万博)に併設されていた遊具施設”星丸ランド”で運行していた、スタージェットという機種が鷲羽山に併設されたもの。更に元を辿れば、製造元のトーゴが展開していた、立ち乗りコースター”ASTRO COMET”シリーズのカスタム機種になると思われる。

つくば万博 スタージェット[1]

 ーゴが立ち乗りコースターを世に送り出したのは1982年4月のこと。よみうりランドと御殿場ファミリーランドで同時オープンした。立ち乗りを実現するため、車両に搭載された油圧ロック機構と昇降シリンダーを駆使し、立席状態でも”イイ感じ”に体を安定させられる安全装置を開発。立ち乗りかつ、ループというのはセンセーショナルなコースターだったらしく、国内外でスマッシュヒットを記録し、数多くの兄弟機種が設置された。

御殿場ファミリーランド スタンディングコースター[2]

 羽山の車両は4人×6両編成の24人乗り。立ち乗りと言いつつ、車両に設置してあるチャリンコのサドルに跨るような形で乗車する。また、サドル真下には前述した昇降シリンダーが付属しており、肩ハーネスの高さが調整可能だ。

開放感MAXの車両

 っちゃんの安全確認が済むと発車ベルが鳴り響き、いよいよ発車だ。駅舎から出ると28mの最高部まで上がっていく。瀬戸内海を背に上っていくため、遥か彼方には児島市がうっすらと見えた。

28mの高さへ巻き上げ

 き上げが終わり、チェーンから解放されると徐々にスピードを増しながらファーストドロップへと向かう。ひっさしぶりの立ち乗りということで、期待が高まる。助走の段階から手を大きく広げてリラックス状態に。まさにタイタニックの先頭で手を広げるジャックの気分だったが、よくよく考えるとあのシーンで手を広げてたのはローズだったし、そもそも俺はディカプリオでも何でもない。

セリーヌ・ディオンのアノ曲はもちろん流れていない

 走を付け飛び出す車両。先頭では何も遮るものが無く、文字通り全身で風を感じる加速感。楽しい。どの席でも浮きらしい浮きは感じなかったが、立った状態で落下するのはこれほどまで面白いのかと実感。ただ、自分の下半身を支える股下当たりのバーが、股間辺りを圧迫するのは頂けない。

ファーストドロップ
最高速度の79.96km/hへ

 ァーストドロップを下ると一気に垂直ループへ突っ込む。突っ込む瞬間、グッと体が押し付けられ膝が”くの字”に曲がる。幸いにも車両の昇降シリンダーが重力と共に動くため、そこまで体全体に負荷が掛からない。改めてよくできたシステムだと思った。

 学校のころブランコ狂だった俺は、いつも立ち乗りで漕いでいた。全力で漕いでいたら360度回転してしまうのではないかと感じる恐怖。流石にビビってしまい、地面に対し100度位の角度で漕ぐのをやめていたが、このスタンディングコースターでは”ブランコで1回転する”という行為を疑似体験できるのだ。興奮するに決まっている。

垂直ループ 最大荷重は4.51Gらしい
横から

 垂直ループを超えると急上昇し、キャメルバック⇒水平ループへと繋がる。コース序盤ということで速度がノリに乗っている状態でのキャメルバック、浮かないワケがない。綺麗に浮いた!と思ったら、間髪入れずに水平ループだ。最後尾だと、キャメルの頂上でかなり減速。そこから一気に引きずり込まれるように加速するのでちょっとビックリ。

瀬戸大橋を見ながらエアタイム!
キャメル⇒水平ループ

 りの水平ループに突入すると、横Gでだんだんとハーネスが下がり足が再び屈伸状態に。本降りの雨かつ超開放的な立ち乗り状態ということで、スピード感と足元の不安定っぷりに大興奮。特に車両右側に乗ると、地面に落ちてしまいそうなスリルがあって良い感じ。水洗トイレみたいだ…

振り落とされそうなスリル、ショック、サスペンス

 平ループ地帯を抜けるといよいよ後半戦。鷲羽山スタンディングの本領発揮だ。ベース機種であるASTRO COMET Ⅰでは、水平ループを抜けキャメルを超えると、トリックトラックのような傾いたレールを突っ走るコトになるのだが、鷲羽山では連続してキャメルを超えるよう設計されている。特に2個めのキャメルはかなり小さい山となっているため、先頭車両ではジャンプするような浮きっぷり。

1個めのキャメル
2個めのキャメル 浮き浮き

 ャメル2連発を食らうとすぐさま旋回。高度があまり上がらず旋回する距離も短いからか、コース最終盤であるに関わらず、まだまだ走れるぜと言わんばかりの疾走感。

高速旋回

 後は一気に地面近くまで降下し、極小キャメルを勢いよく乗り越えフィニッシュ。最後尾に乗ると、この最後のドロップで肩にハーネスが食い込むかと思うくらい強烈な浮きが体験できる。雨でスピードが上がっていた、というのもあるかもしれないが、一瞬だけなら東武公カワセミに肉薄する浮遊感があった。

 た、先頭だと極小キャメルの頂上で、思わず前のめりになってしまうのような不思議なエアタイムを体感。立ち乗りだからか、浮き過ぎてバランスを崩してしまうような感覚だ。

高速キャメルバック
上から

 センのハリケーンもそうだったが、全長が700mにも満たないレイアウトでここまで濃厚なコース展開を作れるのは凄いなと思った。80年代コースター3種の神器であるキャメルバック、垂直ループ、水平ループ(or コーク)を矢継ぎ早に仕掛けてくる展開は隙が無い。特に、水平ループを抜けた後からのキャメルバックを主軸にしたコース展開は、立ち乗り状態も相まってスリル抜群。こんなおもしろコースターを独占している岡山県民が羨ましい。何かの手違いで、近所に移設されることを願うばかりだ。

血色激悪チューピーくん

注釈
※1 バックナンジャーの方は気持ち悪くなるからあんまり…という感想だった。俺もそう思う

※2 今回遊びに行って分かったことは、本降りの悪天候でもスタンディングを動かすことが出来るということ。過去5回、悪天候でもないのに運休していたのは、スタンディングが天気に弱いというよりか、ただ単に俺の運が弱かっただけだった

引用
[1]©アミューズメント通信社 新聞「ゲームマシン」1985年4月15日258号7面

[2]©アミューズメント通信社 新聞「ゲームマシン」1982年6月1日189号26面



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