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もしも村上春樹がクリスマスパーティーの二次会で記憶をなくしたら

気づいた時にはまるでサン・ジョヴァンニ教会で洗礼を受けている聞き分けのよい古代ローマ時代の赤ん坊みたいに、僕はバスタブですやすや寝ていた。

「アルゼンチンが前半で2点取ったぜ」。僕は小人が耳元で囁いてくれたおかげで目を覚ますことができた。決勝戦のホイッスルは既にカタールで吹かれ、メッシがPKを難なく決め、入れ墨の入った右腕を高く掲げていた。

最後の記憶は、ゆかに藤沢駅で遙か彼方昔の人類ついて聞かれたときのことだ。「ねえ、教えてほしいの。ネアンデルタール人はどうしていなくなってしまったの?」。クリスマスパーティーの帰り、駅のホームでジェイと鼠とじゃれあっていたときに唐突に聞かれ、僕はなんと答えれば良いのか分からなかった。すっかり酩酊していたけれど、とりあえず「たぶん北ヨーロッパの寒さのせいさ」と佐野元春がバラードで唄うように答えた。

寒さのせいだって?やれやれ、そうじゃない。他に理由はあるはずだ。でもきのうは飲みすぎて、海馬が完全に麻痺していたんだ。やはり、ハイボールはやかんで飲むべきではない。

たしかアフリカを出発した人類のその後について、ノーベル賞の学者が新説を唱えていたような気がする。ワールドカップが終わり、新たな祝祭空間が始まるまでに彼女に答えてあげることはできるだろうか。二日酔いで痛む頭を振りながら、僕は途方に暮れた。

〇ほぼ実話です。地元の友達たちと午後2時からクリスマスパーティーをやって、その後二次会へ流れ、終わったのが11時過ぎ。久しぶりにヘビーな二日酔いになりました。

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