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23歳の環境活動家に聞く、意識低いとダメですか!?

「コーヒーの2050年問題」ってなに!? コーヒーって飲めなくなるの? —— 好きなものができると、とことん調べてみたくなる30代ライター古澤。コーヒーにハマって夜な夜なネットでコーヒーの情報を集めていたら、「2050年問題」という言葉が目に飛び込んできた。

コーヒーの2050年問題とは、気温の上昇や降雨量の減少により世界の流通量の約6割を占めるアラビカ種の産地が、2050年には現在の半分になると予想されている問題だ。え! 2050年にはこれまでのようにコーヒーが飲めなくなるかもしれないの!? そんなの嫌だ!

さらに詳しく調べてみると、気候変動のほかに児童労働を指摘する記事が多い。どちらも「SDGs」の観点から問題視されているようだ。
ああ、エスディージーズねぇ。ここ数年よく耳にするようになったけど、そもそもSDGsってなに? コーヒーが飲めなくなるのは困るけれど、今の私にできることなんてあるのだろうか(なさそうじゃない?)。でもなんだろう、この後ろめたさは。ただ美味しいコーヒーを気兼ねなく飲み続けたい! という想いに後押しされ、少し調べてみることにした。


SDGsとは、誰も犠牲にせず維持・発展する社会を築くための目標

SDGsとは「Sustainable(持続可能な)Development(開発)Goals(目標)」の頭文字をとった言葉だそうだ。サステイナブル・ディベロップメント・ゴールズ。サステイナブル=「持続可能」とは、どこかの国の誰かや、生き物、地球環境が犠牲にならずに維持・発展できる社会を目指す。SDGsには17の目標があり、期日は2030年に設定されている(あと6年しかない!)。

地球温暖化問題や二酸化炭素排出量削減など、環境問題に取り組むイメージが強いけれど、17の目標の1番目は「貧困をなくそう」、2番目は「飢餓をゼロに」と、人間の生命維持にまつわるものから始まっている。その他にも「3.すべての人に健康と福祉を」「4.質の高い教育をみんなに」「6.安全な水とトイレを世界中に」など生活の豊かさに直結する目標も目立つ。

日本で暮らしていると課題だと感じにくいが、世界の貧困問題は解決したわけではないし、貿易など経済で世界とつながっている以上、無関係でもない。「どこかの国の誰かを犠牲にせず、みんなが豊かな社会」を実現するために貧困問題の解決はとても重要な目標だ。
もちろん環境に関連する目標もある。地球全体が維持・発展し続けていくために、人間生活、資源、生き物、地球環境すべてに対して負担にならないように、目標が定められている。

日本のSDGs達成度は166カ国中21位

最新レポート「Sustainable Development Report 2023」によれば、日本のSDGs達成度は166カ国中21位。日本は遅れていると聞いていたから、100位くらいかと思っていたけれど意外と高い! 調べてみるとその理由は、「4.質の高い教育をみんなに」や「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」など、人間生活にまつわる部分で高評価を受けているからだった。確かに日本に住む者として、納得できる。

一方で「5.ジェンダー平等を実現しよう」や「12.つくる責任、つかう責任」「13.気候変動に具体的な対策を」「14.海の豊かさを守ろう」「15.陸の豊かさも守ろう」では深刻な課題があるという、最も低い評価を受けている。そっか、ジェンダー問題もSDGsなんだ。ジェンダー格差については、ニュースでたびたび議論になるのを見かけるし、個人的にも課題を感じる。

でも、環境に対する目標は、課題があるのはなんとなく察するけれど、問題が大きすぎてイメージできない……。何をしたらいいかわからないのが本音だ。マイバッグを持ち歩いていればいいわけ? 忘れて何個もマイバッグ買ってるけど、これって環境的にどうなのかな。

2020年7月にはレジ袋が有料化され、プラスチックストローの代わりに紙ストローを使う飲食店も増えてきた。生活にじわじわと環境問題対策が組み込まれているのは感じている。野菜の茎や皮をお菓子にするなど、廃棄物を利用して新しい商品を生み出すアップサイクル品を見かけたこともある。

それでも環境問題に対する日本の動きは世界から遅れをとっているということらしい。まだ足りないのか。逆に世界ではどんなことをやっているのだろう。

SDGsの達成度で高評価を得ている国では、買い物をするときに「環境を守るための国際的な認証」が付いているかどうかで選ぶらしい。代表的なのが「FSC®マーク」だ。これは紙製品や木材に与えられるもので、労働者の人権を尊重し、適切に管理された森林の樹木や、適切だと認められたリサイクル資源で製造された製品であることを証明している。

また、水産資源や海の環境に配慮したMSC「海のエコラベル」もある。適切に管理され持続可能な漁業であると認められた、MSC認証を取得した漁業で獲られた水産物に付くものだ。こういった認証を意識している人が多いのであれば、確かに他の国の方が高い意識を持っているのかもしれない。

生活に馴染んでいる「エシカル消費」

FSC®マークが付いた紙容の器と、MSC「海のエコラベル」が付いた商品。
(右)出典元: Jeppe Gustafsson / Shutterstock.com

実は日本でもこういった認証のある商品が少しずつ増え始めているようだ。いつも使っている取材ノートをよく見てみるとFSC®マークがあった。コンビニでMSC「海のエコラベル」が付いたおにぎりも見つけた。意外と環境問題への対策が反映された商品やサービスに触れているんだ。

生活に馴染んだ環境問題対策がおこなわれる一方で、意識的に行動したのかというとYESとは言えないのが正直なところ。ライター自身も便利だからと3円のレジ袋を購入するし、地球にもやさしそうなオーガニック野菜だけ使うとかお肉を食べるのをやめるとか、極端なことはできない。認証マークが付いている商品を選んで買う「エシカル消費(社会問題に取り組む事業者を応援する消費活動)」ができれば良いのだけれど、だいたいちょっと価格が高くて二の足を踏む。
自分はこれまで興味を持ってこなかった上に、何も行動できていない……と落ち込んでしまう。なんともいえない罪悪感から、知らなかったことにしたいほどだ。


意識が低くても環境に対してできること

「自分へのメリット」を大切にしてみよう!

思い悩むライターに「自分にメリットを感じる部分から、行動を変えればいい」と声をかけてくれたのは、22歳から環境活動家として活躍し、1年が経ったという露木しいなさんだ。

大学で学んでいる間も環境問題は待っていてくれないと休学を決意し、中高生向けの環境問題にまつわる講演活動や、SNSでの発信を積極的に行っている。

露木しいなさんのInstagramでは、身近な環境問題を親しみやすく教えてくれている

後ろめたさを感じながら行動できていないライターからすると、なんて高い意識を持った方なんだと、頭が下がる。

「まず問題を知ってもらい、環境を考えた些細ささいな行動ができるように促したい」としいなさんは話す。ヴィーガン(動物性食品をまったく食べない完全菜食主義者)になる、プラスチックを使わないなど献身的な選択だけではなく、もっと身近なところから意識することが重要だと語ってくれた。

「節約」から始めるエシカル消費

彼女の身に付けているものはほとんどが「お下がり」だそうだ。ジャケットや貴金属にバッグなど、母や祖母、友人から譲り受けたものや、リサイクルショップなどの二次流通市場で購入したものが多いとのこと。ああ、おろしたての洋服に袖を通して浮かれている自分が、なんかいたたまれない……。

なんでそこまでできるんですか? 環境のためですか?

ティファニーの時計はお母様のお下がり、指輪はお祖母様のお下がりだという

「お金がないからですよ!」

え!?

「もちろん欲しいものがあれば買いますし、新しいものを買いたい気持ちもあります。でも周りからのお下がりや二次流通なら節約になるじゃないですか。結果的に環境のためになっているだけです」

そう、しいなさんは笑い飛ばした。
自分のお金の節約がきっかけで、環境問題を考えているって、言ってもいいんですか……?

「だって、自分にメリットがないとその行動は続かないし、気に入ったものじゃないと買おうと思わないじゃないですか。“3円節約したいからマイバッグを持とう”とか、“デザインが気に入ったからこの商品を買おう! しかも環境にいいらしい!”とか、そんなきっかけでもいいんですよ」

確かに、節約こそエシカル消費だ。地球規模での善行について調べるうちに少し頭が固くなっていた。環境問題は暮らしのすぐそばにある身近なことで、SDGsはそのゴール。何を目指しているのかを知って、まずは自分にメリットがある部分から、少しずつでも行動できればいいのだ。

好奇心から始めよう!

未来の地球のためとか、遠くの国の困っている誰かのためとか、かっこいい理由がなくてもSDGsに取り組んでいい。難しいことは分からなくても、ただコーヒーを飲むのが好きで、好奇心からコーヒーの2050年問題を検索した、そんなきっかけでもいいんだ。なんだかすこしホッとした。

それなら、わたしにも何かできるかもしれない。コーヒーに関することなら、知りたい!

でもその前に、しいなさん自身の「きっかけ」はなんだったのだろう。若くして環境問題に取り組むことになった、その背景とは。

実は彼女も「純粋な好奇心」がきっかけだったという。それは、英語力を鍛えたくてインドネシア・バリ島にある、ちょっと変わった高校へ進学したこと。
そこはジャングルの中にある、竹でできた学校だったという。

……竹でできた学校ってどういうこと!?

(つづく)

Supported by くるくるカンカン

クレジット

文:古澤椋子
編集:野田春香コヤナギユウ
撮影:尾藤能暢
校正:月鈴子
取材協力:露木しいな
制作協力:富士珈機

ライター・古澤椋子 https://twitter.com/k_ar0202
1993年生まれ、東京都板橋区出身。水産系の社団法人、ベンチャー企業を経て、2023年よりフリーライターとして活動開始。映画やドラマのコラム、農業系イベントの取材、女性キャリアに関するSEO、飲食店取材など幅広く執筆。在宅ワーク中心で、運動不足なことが課題。


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