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あのころもらって嬉しかったもの

電車の内ドアに貼ってある広告。右側には大きく「人生が変わる。」という文言のもと、不動産投資のハウツーが書いてある本の広告が口コミとともに載っていた。左側には転職の案内が。ついでに目線をぐるっと車内にやると、どれもこれも、人生を変えようと唱えるものばかりだった。

今が最高かもしれないのに。変わっていくことと、変わらないこと、そのどちらも大切にできるようにしたい。

会社からの帰り道。東京駅で小さな友達のプレゼントを選んでいた。小学生のころ、なにをもらったら嬉しかったっけなあと考えていた。

わたしは、お姉ちゃんと弟とよくプレゼント交換をした。ある年のクリスマスの恒例のプレゼント交換。お姉ちゃんからは、わたしの好きなお菓子の詰め合わせをもらった。ちょっと期待外れだったなあ、と実は思っていた。

でも、クリスマスパーティーが終わったそのあとでお姉ちゃんがこっそりもうひとつのプレゼントをくれた。

中には、イヤリングが入っていた。わたしは確か小学6年生か、中学生になったか、それくらいで、アクセサリーやお化粧にちょっと興味があった。でも、そういうものに興味がある、ということを伝えるのは恥ずかしかったし、そういうことに厳しい家庭だったので買ってもらえるはずもなかった。(パパといいお姉ちゃんといい、我が家はあとからこっそりが多いな。)お姉ちゃんがくれたイヤリングは、耳を止めるところがプラスチックになっていて透明で、ピアスみたいに見える小さなきらっとしたイヤリングだった。「パパに秘密だよ。」とこっそり渡してくれたお姉ちゃんのことをふと思い出して、グっとなった。

幼いころもらったものは記憶に案外残る。

人生で初めてもらって、うれし泣きしたものもついでに思い出した。”たまごっち”だ。たしか小学2年生のときだった。ずっと欲しくて欲しくてたまらなくて、でも買ってくれなくて、あきらめかけていた。クリスマスパーティー中、パパが「トイレに行ってくる。」と部屋を出た。戻ってくると、まだ仕事から帰ってきてそのままのYシャツの胸ポケットに、たまごっちがお姉ちゃんと、弟と、そしてわたしの分、3つ入っていた。わたしは嬉しくて嬉しくて泣いた。

その何週間後かに、その大事なたまごっちを失くしてして、また泣いた。あまりに泣くので、パパが仕方なくまた買ってくれた。そうしてまた泣いた。

そんなことを思い出しながら、結局選びきれなくてバスの時間になってしまった。なにをもらったら嬉しいかな。まだ考えている。

もらってあんなに嬉しかったのに手放してしまったもの。あんなに欲しかったのに思い出せないもの。たくさんある。

今日は風がとても強く、吹いている。
ああ、そうだ。たしかずっとおさがりだったのに、はじめて新しい自転車を買ってもらった日も、こんなような強い風が吹く日だったな。

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