先輩たちのライブ
人の心が本当に満たされたなら、その人はどう思うだろうか?
ちなみに、僕ならこう思う。
〝この多幸感に包まれて、死にたい〟と。
終業式のあと、ライブが行われる。
だから、学校に行きたい。行かないといけない。
昨晩からそんな思いを拗らせていても、当然朝にきちんと起きれることなどなかった。
学校に着いて、凄い色々ありながらもなんとかライブをする小ホールに到着した。
(凄い色々な内容は〝やさしい人〟にて掲載しています。)
受付をした人は僕が元々入っていた委員の先輩で、
「あっ、来栖ちゃん。来てくれてありがとう。楽しんできてね。」
と、話しかけてくれた。
委員の時の先輩は、他にも沢山いて手を振ってくれたり笑いかけたりしてくれた。
同級生も手を振ってくれた。
ライブが始まると、僕の先輩がドラムとベースをやっていた。次のバンドも、別の先輩がドラムとして出演していた。
バチバチなバンドのライブみたいな照明に照らされて汗を流す先輩達には、きっと〝格好良い〟という言葉しか似合わない。
僕は、ライブになんて初めて行ったから音が鳴り始めた時の興奮は今でも忘れられない。
こんなに音が大きいんだ。
こんなに格好いいんだ。
こんなにライブで輝かしいんだ。
突如に襲ってきた興奮のあまり、休憩時間に委員の時の先輩に挨拶することすら忘れてしまった。
休憩を挟んで、ヴァイオリンとピアノ、一人で歌唱するバラードが始まった。
その場は、一瞬でクラシックコンサート会場となったような静けさと高尚さと美しさに包まれた。
次は、一味変わってダンスが始まる。
僕の先輩たちは、ダンスも上手いのか?
僕の自己肯定感が下がりそうになるくらい感動した。
ライブが終わっても僕の興奮は収まらないでいる。
先輩に挨拶しないと…
そんな忘れていた感情がぶり返してきて、咄嗟にホールに戻った。
でも、ホールに入る勇気なんてなくて彼氏のライブを観にきた先輩二人と一緒に待たせてもらった。
小一時間待って、僕が一番会って話を伝えたかった先輩と話す。
嗚呼、やっぱり先輩が大好きなんだな
そんな実感がした。
帰りの電車、僕はとある恋愛の小説を読んでいた。
生きた死体となった彼が恋人に包まれて成仏していく話だ。
彼は、恋人からの最高の愛に包まれながら死んだのだから幸せなんだろうななんて思いを馳せていた。
それに充てられた僕のまだ収まらない感情は、この多幸感に包まれて死にたいと本当に思った。
大袈裟でも、なんでもない。
唯々、死にたいと思った
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