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北陸へのいざない。その1

 北陸に行きたい。北陸は旅人を魅了する何かがある。新幹線ができる前は在来線に何時間も揺られる、そんな遠い場所だった。機嫌のよろしくない週間天気予報と限りある休暇をにらめっこしつつ旅程を検討し、いざ行かんとホテルを予約したのは前日の夕方だった。なんと素晴らしい新幹線という乗り物があるにもかかわらず、北陸にたどり着く前に降りる旅程を組んだ。ローカル線の方がその土地の雰囲気を直に感じられるという目論みである。(2022年8月某日訪問) 

上越妙高駅

 上越妙高駅で降りて、えちごトキめき鉄道という恥ずかしくて発音したくない鉄道の切符を買う。帰省シーズンで混雑しており座席にあり付けなかった。

筒石駅 トンネルの中にある

 筒石駅で降りる。トンネル駅である。トンネル駅というと上越線の土合駅が有名だが、筒石駅もなかなか良い雰囲気だと思う。駅を出るとただただ山が広がっている。今日は近くの集落まで歩いてみよう。

筒石駅から歩いて海岸まで来てみた

 トンネル開通とともに廃止された旧線跡はサイクリングロードになっていた。しかし本当に海の近くを走っていたんだと思う。台風がきたら高波で流されてしまいそうだ。

サイクリングロード

 富山に入ってあいの風とやま鉄道に乗り換える。これもまた恥ずかしい名前である。ちなみに石川県に入るとIRいしかわ鉄道と普通になり、福井県で開業予定なのがハピラインふくい。。。

黒部駅

 黒部駅で降りて昼食とした。日本海側の都市は海産物がうまい。寿司などは絶品である。しかし観光客向けの店は懐にが不安になってしまいよろしくない。地元客向けの良い店で尚且つ地元の魚を仕入れている店は無いかと調べてみて、地元資本の回転寿司屋を訪れてみることにした。

国道沿いの回転寿司屋

 店内は普通であった。格安寿司チェーンと同じようにタッチパネルで注文し、新幹線に乗せられて寿司がやってくる。ちゃんと北陸新幹線の車両なのはさすがである。

白身魚

 富山県で水揚げされたという白身魚のネタを注文する。淡白な見た目とは裏腹に脂と旨味が広がる。これは良い。優れている。

のどぐろ

 値段はまあ普通だった。とはいえ東京でこの味を求めたら1.5倍の値段はするだろうと思いながら駅まで歩くのだが、遠い。国道沿いのロードサイド店舗に駅から徒歩で行くものではない。

富山地方鉄道
ドーム屋根がかわいい

 電鉄黒部駅に着いたのは発車5分前くらいだった。富山地方鉄道の駅である。ホームに出た瞬間、感動した。レトロなアーチ状の屋根が、錆びついた骨組みと共に眼前に広がる。そして可愛らしい電車と細すぎるホーム。なんだろう、よく出来た鉄道模型ジオラマのようにちんまりと可愛く昭和の空気感が凝縮されている。これだよこれ。地方私鉄の雰囲気ってやつだ。

良い

 地鉄電車は走り出してからも素晴らしかった。この雰囲気。映画か何かの物語に入り込んだようだ。いわゆる田舎の情景が一つの箱にパッケージされている。この景色、この空気、この匂い。こういった昭和レトロなテーマパークの偽物アトラクションとは違う本物がそこにあったのだ。

電鉄富山駅の良い雰囲気

 そんな世界観も富山駅が近づくにつれて現実の都市風景が超越してくる。雰囲気が良い電鉄富山の改札を抜けて駅前広場に出ると、なんとも超都会的な新幹線高架駅が眼前に広がる。あっという間に昭和から令和にタイムスリップしたようだ。

まるで未来の富山駅

 その2に続く…

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