北陸へのいざいない。その2 ~古びた路面電車で向かう日本海~
富山駅は令和最新版と思わず呼びたくなる。まるで絵に描いたような未来都市然とした装いである。立派すぎる高架駅に登ると開放的なホームにちょこんとIRいしかわ鉄道の車両が佇んでいた。これから高岡駅まで移動して、万葉線と呼ばれる路面電車に乗る予定である。休日とはいえ夕方のラッシュ時間帯。発車間際に乗り込んだ僕に席は用意されていなかった。
(2022年8月某日訪問)
車内では否応なく乗客の会話が耳に入る。高校生だろうか、片方は電車通学でもう一人は自転車で通っているというような話をしている。地方都市で電車通学というのは東京と違って時刻表に縛られがちで自由が少ないものである。しかし大きな街に繰り出せる電車という乗り物に毎日乗れるのは好奇心旺盛な年頃には魅力だったと若いころを思い出した。
おもいのほか寂れているというのが高岡の印象だった。地図を眺めて旅行の計画を練っているときは大きな都市に見えても、いざ降りると飲食店の少なさに狼狽するのは一人旅あるあるだ。
スマートなトラムという印象を持っていた万葉線だが、ホームに居たのはレトロな高床車だった。コンプレッサーの音を響かせながら高岡の駅を発車したものの乗客は片手で数えるくらい。さっきの北陸本線の混雑はなんだったのだろう。未来的な富山駅からまるでタイムスリップしたようだ。けたたまししく唸りを上げる吊りかけモーターの路面電車に揺られながら、今日はタイムスリップが多いなと思う。
それにしても単線区間や専用軌道区間はとても良い雰囲気だ。ローカル鉄道とはこういうのを言うのだろう。昭和の時間旅行を十分満喫したころに終点の越ノ潟についた。
ここから渡し舟で港の向こう岸まで行けるらしい。船着き場がとても良い雰囲気でつい乗ってしまいそうになったが、時間もないので踏みとどまった。
新湊大橋を眺める。天気が良ければ夕日が見れたのだろうけどあいにくの曇り空。
行きは雰囲気の良い旧型車だったが、帰りは最新式の低床車、しかもドラえもんラッピング車が来た。原作者ゆかりの地らしい。
高岡駅前はまともに飲食店がやってなかったのでホテルでコンビニ飯とした。
その3へ続く……
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