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スピリチュアル・メイト 第1章「ローラの髪留め」

第5話 coffin of love

「愛する人を想って死を選ぶって、どれほどの想いなんだろう……」
 目覚めてから私は、それ以前の記憶がない。私は恋をしたことはあったのだろうか。自分の人生をかけて愛を貫いたリリーとローラが、なんだか羨ましく思えた。
 静かな薔薇園を夜が包んで、やがて星が空に輝き始めた。星を見つめていたら、突如激しい頭痛に襲われた。
「……っ!」
 強く瞑った瞼に、途切れ途切れ、写真のように断片的にイメージが浮かんでは消えた。それと同時に誰かの声がした。

『ひとはしんだらおほしさまになれるって、ほんとう?』
『本当よ。だから里沙ちゃん、あなたもお星様になれるよう、いいことをして生きなさい。困っている誰かがいたら助けてあげるの。いいことをたくさんしていれば、神様が見ていてくれて、いつかお願いごとを叶えてくれるかもしれないわよ』
『ほんと?わーい!そしたらりさ、いいこといっぱいする!そしたら、ほめてね、おかあさん!』
『もちろんよ。里沙。あなたは、私の一番大切な、天使だもの』

「……おかあ……さ……ん」
 これは何?もしかして、私の記憶……? 徐々に頭痛が弱まっていくのとともに、フラッシュバックしていたイメージも薄れて消えていった。
「里沙。あなたの記憶を取り戻したければ、誰かの魂の成仏を手伝うの。そうすれば元の世界に戻ることもできるわ」
 振り返るとRがいた。自分の記憶を取り戻したい気持ちと、リリーとローラを救いたいという気持ちが、少しずつ大きくなっていくのを感じた。
「……わかった……やってみる」

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