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【連載】ターちゃんとアーちゃんの歳時記 神無月

かけっこ

 アーちゃんは一緒に遊ぼうとターちゃんの帰りを待っています。

 だけど、この頃ターちゃんはアーちゃんに構ってくれません。

「ただいまーっ。いってきまーす」
 ターちゃんは帰るや否や出掛けてしまいます。
 またもアーちゃん、当てが外れたようです。
「ちょっと、どこ行くの?」とママ。
「タクちゃんちーっ」
「車に気を付けるのよ!」
 ママは小さくなっていく背中に声を掛けます。

 今日は久しぶりに、二人でいつもの公園に出掛けるようです。
 ターちゃんはビニールのボールと虫網を持って走ります。
 アーちゃんは二人分の水筒を肩から提げ、虫かごを手に追いかけます。

 アーちゃんは走るのが遅いので、いつもターちゃんに置いてけぼりにされます。
 汗びっしょりになりながら、喉が乾いたと言っては、ひと休み。疲れたからと、一休み。

「アーちゃん、早くーっ」
 ターちゃんの呼ぶ声がします。
 さあ、またアーちゃんのかけっこが始まりました。

 さて、そんなアーちゃん。
 去年はビリだった運動会の徒競走ですが、今年はビリから二番でした。

 はて、これはターちゃんのお陰でしょうか。


えのぐ

 ターちゃん、学校から帰ってきました。
「シャツが汚れているわよ」
 ママは、シャツの胸に絵の具が付いているのを見つけました。

 朝、下ろしたばかりだから気を付けるよう、口酸っぱく言ったのに。
 ママは天を仰ぎます。
 ターちゃんは、今気づいたとばかりシャツの前を見ています。多分に確信犯的です。
「どうして背中にまで、絵の具が飛んでいるのよ!」

 ターちゃんは、図工の授業中、タクちゃんと巫山戯ふざけ合っていて、気づいたら白いシャツが水玉模様になっていたそうです。
「うーん、それだけ元気ってことよ」
 あっけらかんと言うターちゃんに、
「何言ってるの。そういうことじゃないでしょう」
 もう。
 お尻にぴしりと平手打ち。

 この頃はアーちゃんまで、口が達者になってきました。
 なかなか素直に、言うことを聞いてくれません。

 ママは、この頃、本の少し手の方が早くなりました。
 本の少し、です。


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