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「もの食ふ」枕草子④

100段「淑景舎(しげいさ)、春宮(とうぐう)にまゐりたまふほど」に帝と中宮定子様の真昼のラブラブシーンが描かれています。明治時代とか戦前なら、清少納言は不敬罪で逮捕された!

性的におおらかだった平安時代~実にあっけらかんと、二人の熱愛シーン、そして定子の父関白道隆の、気が利いた、可愛げのあるオヤジぶりが描かれています。

「お二人は今お取込み中であらせるから、わいわい、宴会やっちゃえ、飲めよ、食えよ」と上機嫌。
 
さて、緊急に開催された飲み会、どんな食べ物が出されたのでしょうか。

とても長い段ですが、その部分だけ、つまみ食い。定子の妹(東宮妃)が定子の局を訪ねてきた時のこと。片時も定子と離れていたくない帝が突然やってこられた.。

未の時ばかりに、「筵道(えんどう)まゐる」など言ふほどもなく、うちそよめきて入らせたまへば、宮もこなたへ入らせたまひぬ。

午後二時ごろ、「筵道をお敷しき申し上げる~」と声が聞こえたと思ったら、なんと、帝がさらさらと衣擦れの音をたてながら部屋に入っていらっしゃった!びっくりした~わたしたち。(筵道というのは高貴なお方のために長いゴザで作った敷物を敷くこと)。宮さまもおおあわてで、母屋にお入りになりました。

やがて御帳(みちょう)にはいらせたまひぬれば、女房もみな南面にみなそよめきいぬめり。

帝はそのまま定子様を連れてベッドルームに入っちゃった!女房も皆気を利かせて南面の廊下に衣擦れの音をさせて去ってしまったみたい。(この時、作者はどこにいたのかよくわかりません)帝15歳、中宮様18歳。はやくお子様を作るのがお仕事だから、こうでなくちゃね。

廊に殿上人(てんじょうびと)いとおほかり。殿のお前に宮司(みやづかさ)召して、「果物、魚など召させよ。人々酔はせ」など仰せらるる。まことにみな酔ひて、女房と物言ひかはすほど、かたみにをかしと思ひためり。

廊下には役人がいっぱいいてね。殿(関白道隆)は定子様付の役人を呼んで「果物や酒のさかななど出しなさい。ここにいる人を皆酔っぱらわせなさい」などおっしゃったの。そして、酒がじゃんじゃん出て、皆、酔っ払ってさ、男の役人も女房たちとおしゃべりして、どんちゃん騒ぎ。お互に、めちゃくちゃ面白いって思っているみたい。(作者はどこで見ていた?)

ステキじゃない?千年後のあなたたちもそう思わない?

真昼から帝が中宮様とラブラブなんて、私たちもすごくハッピー!このころ帝のお妃は定子様お1人。妹の原子様は淑景舎の東宮妃。
まさに関白道隆さまご一家の最盛期。私の宮仕えも最高に輝いていたとき。お子様が生まれれば天下を取ったようなもの。だから、お二人で、人目もかまわず、というより、関白様や私たちにアッピールするかのようにベッドインしたことは、最高におめでた~いことなの。

☆帝がいつ誰と関係を持ったかは公式の記録にも残されています。それが帝の政治でした。そういう時代だったのです。

ところでこの時、どんな酒や肴が出たのでしょう。果物なんて高価なものまで出すとは関白様は気前がいい~。他の段でも道隆は面白いオヤジギャグ飛ばしたり、お茶目で可愛い~。

これは旧暦2月のことですから、果物は野イチゴ、枇杷、かんきつ類。酒は上等の米で作った清酒。古代のクッキーといえる唐菓子。鯛の焼き物。貝の煮物、雉の焼肉。大根、人参、茄子の酢の物、蕨のお浸し、ゼンマイの蒸し物などかな。

想像すると、なんか、嬉しくなります。食べる時って、人間がいちばんハッピーなんですね……いつの時代でも~



















 


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