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2023会員ベスト〜eXTaCy編〜

びっくりしちゃった。

今年読んだ作品を数えてみたら、危うく両手両足の指で収まるところだった。流石にそれはちょっと盛ったけど、筆者が三面六臂の阿修羅像だったら危なかった。

個人的には美少年風なビジュのやつが好きです

どうも、最近観仏(仏像を鑑賞すること)にハマり、洛外へはみ出しはじめた3回生・eXTaCy(@21stcentury114)です。一昨年の暮れ、noteに鞭打つため始めたこの会員ベスト企画。毎年暮れの恒例企画にしていけるといいね、と言っていたのも束の間。昨年は冬コミの忙しさなどで目を逸らすうちに新年を迎えておりました。過去のnoteに鞭打たれていたのは己自身だったというわけですな。ガハハ。
途絶えてしまったなら、また始めればいいだけのこと。気を取り直して今年やっていきたいと思います。
とはいえ、この片手でつまめてしまいそうなほど薄い筆者の読書バルク(読了本を積み上げたときの厚み。読書筋肉とも)から、さらに今年の新刊で5作…と限定していくとベストでもなんでもなくなってしまうので、小説・漫画・映像から新作Top5、番外編で今年筆者が触れたもの紹介みたいな感じでも……あ、ダメ? あ、そう……。

会員ベスト(新作編)

5位 Yukimi Ogawa "Like Smoke, Like Light: Stories"
恥ずかしながら1ヶ月前まで、Yukimi Ogawaという作家の名前すら知らなかった。12月初頭にこのサークルで主催したイベント「京都SFフェスティバル」にて作家の勝山海百合さんが注目の日本人SF作家として名前を挙げていて、その縁で知ったのだった。
このYukimi Ogawaという作家を特徴づけるのは1.日本生まれ日本育ち 2.現在も日本在住 3.だけど発表媒体はオール海外ウェブジン・発表言語もすべて英語 という3コンボ。非英語圏の作家が英語でSF作品を発表し存在感を増していく中、ある意味当然いるはずだったポジションの作家が日本にもいるのだ、と知って筆者自身が勇気づけられた。SF・ホラー・幻想というキーワードたちの「はざま」を幽玄な書き口とともに描く初の短編集だ。
今年は京フェスに向けて労力と時間を割き、10月頃の読書量がかなり落ちており、本末転倒では……という思いを抱いていたが、こういう出会いがあるからなかなかやめられない。

(↑電子書籍なら150円くらいで買えるよ)
4位 映画「アリスとテレスのまぼろし工場」MAPPA
今世紀最大のタイトル詐欺にして、監督・岡田麿里の2作目となる今作。
これまでの岡田麿里作品でしばしば見られてきたように、今回も地方都市を舞台とするが、既存のものと異なり今作ではもはや「目指す場所」としての東京すら消去され、取り残される場所としての「まぼろし」と「現実」を隔てるものはベール一枚でしかない。「閉塞感」という時代を正面から捉え、セカイ系の新たな展開を見せた力作なだけに、タイトルで著しくつまずき、あっという間に劇場から姿を消したことだけが本当に悔やまれる。出町座ならまだ見れるぞ!

3位 市川沙央「ハンチバック」
完全にSFとも幻想とも関係ないところからの選出となるが、言わずとしれた本年上半期芥川賞受賞作だ。「私の身体は生きるために壊れてきた。」──この作品そのものがもつ、読むという行為そのものに対して突きつけられる鋭利な攻撃。変な話だが、文學界に新人賞受賞作として掲載されたものを誌上で読んだときからなんとなくこの作品が芥川賞を獲るのではないか、と感じていた。なんでだろ。

2位 panpanya 「商店街のあゆみ」
気がついたら下期のものばかりになってしまっており、如実に上半期の記憶を失っている。panpanyaの特集号がユリイカで組まれ、panpanyaイヤーといっても過言ではない今年(来年?)。装丁も毎回独創的で、「末代まで紙媒体で購入し続ける作品」ランキングなら確実に殿堂入りのpanpanya作品だが、本書も例外ではない。いざ本を紐解けば、まず感じるのは確実に誰でもない”空虚”な主人公が、夢の切れ端や小学生の空想を補強していくように冒険していくさまを今年も見れてうれしい、ということ。一方で、それらの想像のディティールが年を経るたびよりソリッドになっており、変わらないスタイルのなかで変化していくさまを感じ取ることができた。

1位 平野啓一郎「信心」
単行本として出版されたのは2021年だが、文庫版が今年出てKindleでセールされてたので、あんま今年本読んでねえしな〜と思ってポチったら結果的に今年最も食らった小説のひとつとなってしまった。 ちょっとすごすぎる。筆者はこの本の読書会なんて全然したくない。嫉妬すら覚えるレベルで一線の小説のすごさというものを分からされてしまった。 とてつもなく文章がうまいのと同時に、これまでの作品群とも毛色が異なる。 VFという、機械学習AIを積み本人のように会話できる亡者の仮想現実アバターが物語の中心であり周縁でもあるギミックとして登場し、世界観もかなり現実から近似された近未来日本。見て分かる通りかなりハードにSFであり、この作家はマジで脱皮している。

こうやって見ると、今年前半に読んだものの印象をさっぱり忘れているのがよく分かりますね。人間なぞ、所詮その程度。

最後にお知らせです!

SF研はコミックマーケット103に出展します!
今年も今年とて最後まで走り切りますので、よろしくお願いいたします。

それでは。
eXTaCy

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