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毛利 英昭「人生をクリエイトする」

1.大阪に生まれた隠れ家

2020年9月1日、キングコング西野亮廣さんの絵本「えんとつ町のプペル」の世界観を再現した宿泊施設『頓堀宿泊室 TOMBORI GUEST HOUSE』が大阪・日本橋にオープンした。

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外観は通常のマンションだが、いざ扉を開けると部屋ではなく、雰囲気が漂う路地裏が現れる。

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煤(スス)が蓄積した壁や雨染みなどが染み込んだ床など各所に「えんとつ町」の世界観を感じることができる。

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現実とファンタジーの境界を曖昧にさせたこの見事な空間設計は、西野亮廣さんが仕掛ける個展やイベントなどを数多く手掛けてきた空間デザイナー、只石快歩さんの手によるものだ。

ここは表に看板を出していないため、「詳しい所在地は予約者のみに伝えられる」というまさに隠れ家的な宿泊所になっている。

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仕掛け人は、シルクハットを被り、蝶ネクタイに緑のスーツを身にまとった頓堀宿泊室オーナーの毛利英昭さんだ。


2.自分で会社をつくりたい

現在48歳の毛利さんは、1972年に3人兄弟の長男として福岡県北九州市で生まれた。

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父は祖父から継いだ呉服店を経営していたが、毛利さんが小学5年生のとき、会社が倒産し、父はサラリーマンに転職。

翌年には、父の転勤に伴って、一家は京都へ転居した。

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父の呉服店を手伝っていた母は、離婚後は子ども3人を育てるため、昼はタクシー運転手、夜は水商売の仕事をして昼夜を問わず必死に働いた。


母が自分たちを養うために働く姿を目にしてきた毛利さんは、父のようなサラリーマンではなく、父ができなかった会社経営を自分でしたいと考えるようになった。

高校卒業後は、立命館大学経済学部へ進学。

大学を出たあとは、23歳から大阪の金融会社へ勤務した。

「金融というのは、目に見えないものを扱っていて、損をするときは何千万や何億も損をしてしまうことがあるんです。当時は、いまのようにインターネット取引で完結するものじゃなくて、対面で仕事をしていましたから、まるで目の前でお客さんの財産を搾取しているような心苦しさがあったんです。自分は一生ここへ加担していくのは無理やなと思いました」

さらに、毛利さんは30歳までには会社の経営をしたいと考えていたが、例えば銀行員が銀行を設立することができないように、金融業において独立することは困難なのだ。

働いているうちに金融業界に対するこうした違和感が増していくようになり、3年で退職した。

そして、金融のような無形のものではなく、形のあるもので、なおかつそれを持ち続けることによりお客さんに利益をもたらすことのできる商売として選んだのが不動産業界だった。


3.不動産業への道

「不動産というのは、極端な話、価値が下がっても売却さえしなければ、損をすることはないんです。多くの人にとって人生最大の買い物になる不動産だからこそ、いろいろな不安や期待を抱えていると思います。そうであるからこそ、自分が自信を持って販売できる商品やと思ったんです」

26歳からマンションディベロッパーに転職し、マンション営業を10年間続け、独立するためのノウハウを学んだ。

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そして、リーマンショックの翌年の2009年5月に株式会社リンクスを設立し、代表取締役に就任。

大阪の都心物件に特化した投資用ワンルームマンションの売買をメインに事業を展開している。


「うちはワンルームに特化しているので、ひとりで何件と買われる方も多いですね。老後に備えてだったり、所得税や住民税軽減を目的にした節税目的だったり、住宅ローン契約時には、団体信用生命保険が組み込まれているので万が一のときの生命保険代わりにと、ひとりひとり目的は様々ですが、資産運用のため30代から40代の方を中心に利用していただいています」

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大阪中心部という好物件を多く扱う毛利さんの会社だが、他社との競合も容易に想定されるなかで、業界への新規参入には相当障壁も多かったことだろう。

話を伺うと「僕は土地を知っているのではなく、マンションディベッパーがつくってくれたマンションを知っているだけ」と教えてくれた。

紹介を受けた物件をひとつひとつ期日内に売却していったことで、マンションディベッパーとの関係性を築いていったようだ。

もちろん毛利さんは、そうした仲介業者からだけではなく、顧客からの信頼も厚い。

現在は、「買うんだったら毛利さんとこから」とお客さんからの口コミが次のお客さんを呼び、それがまた次のお客へと繋がっているという。

会社の規模が違うのでシェアはとっていないけど、質や満足度は大阪で一番だと自負してます」と断言する。

こうした発言の裏には、顧客へ売却して終わりではなく、その後のアフターフォローも含めて、顧客との関係性を丁寧に積み重ねていっていることが伺える。


4.大阪を盛り上げたい

そんな毛利さんの仕事は、本業だけに留まってはいない。

外国人旅行者の増加に伴って、大阪で民泊事業が必要なことが分かると、本業の仕事は社員に任せて、2年前から民泊を開始した。

頓堀宿泊室があるビルに4室を所有していたが、転機が訪れたのは昨年9月のこと。

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「ビルのオーナーから『5室目が空いたからどうですか?』と声を掛けられたんです。でも、前の入居者が長く住んで損傷が激しかったから、全て壁などを剥がして構造体だけを残してスケルトンに戻してからリノベーションするみたいで。そのときは、新型コロナウイルスなんてなかったんですが、いまはインドウンド向けに民泊をやってるけど『もし何かあって外国人が来なくなったら、やばいんちゃうか』と思ったんです。国内でも需要のある民泊をやりたいなと考えてて、それなら『西野さんの絵本の世界を体感できるような部屋をつくりたい』と考えてできあがったのが、この頓堀宿泊室なんです」

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なんと、頓堀宿泊室に1泊すると「えんとつ町のプペル」の絵本が子どもたちに1冊寄付されるという支援も始めた。

西野亮廣さんへの応援はもちろんのこと、「子どもたちの笑顔を守りたい」という毛利さんの粋な心意気に、僕は感服せざるを得ない。

そして頓堀宿泊室の隣には、同様の世界観を体験できる部屋をもう1つつくる計画も進んでいる。

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さらに、頓堀宿泊室の地下には、待ち合わせ場所やイベントスペースなどとして使うことができる秘密基地「頓堀シェルター」の運用も始めた。

不動産を使って、現実とファンタジーの橋渡しをしようとしている毛利さんのような存在は、唯一無二だ。

毛利さんは、自分の会社の利益だけにとらわれてはいない。

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ホリエモンこと堀江貴文さんの勧めでトライアスロンを始めた毛利さんは、大阪城の堀でスポーツ大会を催す大阪城トライアスロンを2017年から毎年開催するなど、大阪の街を盛り上げることにも尽力している。

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また、大阪を舞台に9ヵ国の人気俳優が出演するリム・カーワイ監督の映画『Come and Go』の制作にも協力。

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このたび東京国際映画祭のTOKYOプレミア2020への招待が決定した。

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「とにかく大阪を盛り上げたいですね。大阪の街に人が集まって、お金が落ちることで、大阪の経済が活性化され、結果として不動産の価値も上がるでしょ。そうなれば、お客さんが所有している不動産の価値が上がるから、お客さんも喜ぶことになるんです。キングコング西野亮廣さんのセリフじゃないですけど、『全員を勝たせる』という気持ちで活動してますよ」


5,エンタメを生み出す不動産会社社長

戦後、不動産などを扱う人たちは周旋屋(しゅうせんや)と呼ばれ、土地や家屋の売買だけでなく人の雇用などを周旋する仕事に携わっていた。

なかには人を騙すような仕事をする人も多かったことから、高齢の人ほど不動産業者に対して不信感を抱いている人は多い。

ところが、毛利さんの活動はどうだろう。

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「頓堀宿泊室オーナー」だけでなく、「えんとつ街の不動産屋」へと活躍の幅を広げ、そのうえ大阪城の堀を使ってトライアスロンまで企画開催している。

これは、立派なエンターテインメントだ。

「私はエンタメに出逢って、人生が変わりました。エンタメには可能性が無限大にある気がしていて、それをビジネスに導入することで凝り固まっている業界の視野を広げていきたいと思っています。お客さんもエンタメに出会うことで、豊かな人生を送って頂けるのではと考えています。いつかは『えんとつ町のプペル』の世界観であふれたマンションをつくりたいです」

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頓堀宿泊室は、いま一番行ってみたい、泊まってみたいと思える場所だ。

インターネットの普及により、誰でもさまざまな情報が得られる時代となり、格安の宿を探せば枚挙に暇がない。

そうしたなかで、頓堀宿泊室の特筆すべき点は、空間に価値を持たせたことにある。

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不動産の価値とは、土地そのものではなく、生活を包む空間にある。

土地だけでなく、そこにどんな建築を建てることができるかで、僕らの生活の質は変わってくるだろう。

そうした意味では、不動産と建築とをこんな風に上手に繋げることのできる人は、より良い生活やより良い人生の姿がデザインできる人に違いない。

だから、エンタメとの相性も良いはずだ。

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キングコング西野亮廣さんは、「時代は『店検索』から『人検索』に変わる」と宣言している。

インターネットにより、情報や技術が共有され、あらゆるサービスのクオリティーが均一化されるなかで、選ばれるのは毛利さんのように多くの「信用」を持ち得た人なのだろう。

お話を伺ったあと、僕は次にどんなことを仕掛けてくれるのか、毛利英昭という人から、もう目が離せないでいる。

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