マガジンのカバー画像

作品群

31
散文詩、短歌、ショートショートの作品群。
運営しているクリエイター

記事一覧

やわらかい真夏の風をふうわりとヴェールにしながらアイスを買いに

リットルとデシリットルとミリリットル教える立場で解答を見る 牛乳が1000mlと言いながら頭の…

朽木裕
1年前

140字散文 004

泣いたら負けだよ、なんてじゃあ生まれた瞬間負けてんだわ人類。気持ちだけは勝っていこうって…

朽木裕
2年前

140字散文 003

馬鹿みたいだなって自分のことを思うのはきちんと俯瞰ができているんですか私。馬鹿みたいに生…

朽木裕
2年前
1

140字散文 002

吐く息は白い、きぃん、と外気に浸透していく私は白く透明にはなれやしないというのに。人間な…

朽木裕
2年前

140字散文001

ざらついた夜は鼓膜から忍び込んでくる、静かに耳鳴りのする時間、夜は深いほどに黒く濃い。念…

朽木裕
2年前
4

新刊百合短歌集『きみは花緑青』サンプル

Text-Revolutions Extra2 通称テキレボEX2に出す新刊です。激重感情炸裂の百合短歌です。新…

朽木裕
3年前
5

十月櫻の自死を待つ

春光のなかにある桜色の、儚くも美しい季節よりも、わたしは、うら寂しいばかりの十月桜と共に息絶えたいと乞い願う。白く霞むひかりの帯は十月桜の小枝に絡み付き、天女の羽衣のようにしな垂れた。さくら。さくら。写真が好きなきみは、寂しいのが嫌いなきみは、この季節をどんな風にファインダーにおさめるだろうか。あの日、カメラに残された35ミリのフィルム。耐え切れずに陽の光の中で乱暴に、ずたずたにフィルムを引っ張り出して、本当に、本当に、ごめんなさい。二度と許されないことをしたね。やっていい

ひとり夏を悼む

 外に出てみたら風が完全に秋のそれで戸惑ってしまう。蝉は死に絶えた。夏は逝ってしまった。…

朽木裕
3年前
3

レム

「…rapid eyes movementだね」 「なにが、」 「最も深い睡眠状態で、覚醒には強い刺激が必…

朽木裕
3年前

透明骨格標本

 酸素と染色体を使うことで蛋白質を 透明に軟骨を青に骨を赤に染め上げる透明骨格標本。  …

朽木裕
3年前

電車が参ります

 踊る月は赤い死を孕んで僕はと言えばプラットフォームでぼんやりと電車を待っている。黄色い…

朽木裕
3年前

曼珠沙華心中

 ねぇ、私と戯れてみて、そう声は響いてがさがさと河岸の草を掻き分けて逃げまどう。わたしは…

朽木裕
3年前

さようなら、ベテルギウス

 肉眼で観測できる、数少ない変光星。星座中で最も明るいとされるバイエル符号αが付けられて…

朽木裕
3年前

生きてたらいいことあるの

 ぷわん、と空に放たれたしゃぼん玉は微かに虹色にきらめきながら、ぱちん、と弾けて消えた。夜を待つばかりの空に向けて、慈悲を許さない僕の狭い世界に向けて、溜め息みたいにしてしゃぼん液に浸した筒を、ひと吹き、ふた吹き。ああ、どうしようもないな、勝手に溢れてくる涙は乾き目ってことにして、温さを僅か残した屋上に大の字になる。飛行機雲。飛ぶ鴉。電線が風にたわんだ。 「死んだっていいことないよ」  声を真似て喋ってみる。吐き気がした。じゃあさ、生きてたら、いい事あんのかよ。直接糾弾は